てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「ぶっ」
 
「ばーか」
 
「ちょっと!」

 
 もう怒った。
 いくら雷のカミサマだからって勝手がすぎる。

 
「鳴神! 自分勝手なことばかりしてると怒るよ!」

 
 ぶんっと勢いよく腕を振って鳴神を振り払おうとすると、ようやく鳴神は足を止めた。
 
 小走りで走ってきたから、息が上がってうまく続きが出てこない。
 
 まさかここまで計算済みだったりして?
 
 それは私の被害妄想かもしれないけれど――
 
 とにかく鳴神は私の方を向いたのだ。
 
「……鼻」
 
「へ?」
 
「ぶつけたろ。痛いか」
 
「ま……まあ、痛いか痛くないかと聞かれたら少しは……痛い」
 

 落ち着かなくなって、なんとなく鼻の頭を押さえた。
 
 ズキズキ痛むわけじゃない。
 どちらかと言うと、じんじんするような。でもすぐに消えてしまう痛みだ。
 
 もしかして、気にしてくれたのだろうか。
 
「だ、大丈夫だよ。すぐに痛くなんてなくなるから」
 
「ふーん。なら遠慮なく」
 
「はい?」

 鳴神は片手で私の顎に触れるとそのまま持ち上げた。

 
 あれ、この流れ……さっきの晴人と同じ?

「な、鳴神?」

 鳴神は何も言わない。
 
 表情も変わらず、さっきの無表情のまま。
 でも、確実に距離だけは近づいてきている。

 え、待って。
 
 このままじゃ、私、鳴神と……

 
 ……キス、しちゃう?

 
 待って待って、何も心の準備ができてない!
 
 や、準備ができてたらいいってワケじゃないけど……
 
 でも、一生に一度しかないファーストキスが、こんなムードの欠片もないまま、なんて、それは、ちょっと……

 
「な、鳴神っ! 待って」
 
 
 鳴神を押し戻そうとして、手が動かないことに気がついた。片手は鳴神に握られたままなのだ。
 
 もう片方は自由なはずなのに……緊張しているのか、胸のあたりで握りこぶしを作ったまま動かせない。

 どうしよう。私、このまま、鳴神と――