てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「いつまで晴人に抱きついてんだ? さっさと行かねえと学校遅れるぞ」
 
「な、鳴神! 別に抱きついてなんか……」
 
「あっはは。朝っぱらから元気だなあ、鳴神は」
 
 続いて姿を見せたのは鳴神。くあ、とあくびをしながらも一言多いのは相変わらずだ。
 
 もう、と頬を膨らませながら自分の足でしっかり立つ。

 仁王立ちで鳴神にどうだ! と見せつけた。
 
「ハイハイ。ご立派ご立派」
 
 まったくそう思っていない口調の鳴神に、これで学校生活が上手くいくのかと心配になってしまう。
 私の心配をよそに、すたすたと歩き出した鳴神を追って駆け出そうとすると、後ろからポンと肩を叩かれた。そのままぐいっと後ろに引き寄せられる。
 
「ふえっ」
 
 振り向けば、もちろん晴人が立っていた。しかし明るいいつもの表情ではなく、どこか思わせぶりな微笑みだ。
 
 歯を見せずにふっとほころばせた口元は、大人びていてドキリとする。
 
「俺としては……抱きついてもらっても、イイけど?」
 
 私の背の高さに合わせるように身をかがめた晴人の吐息が耳をくすぐる。
 
 
 え、ちょっと待って。
 
 晴人ってこんな風な笑い方するんだっけ?
 
 こんな低い声で囁くんだっけ?
 
 いつもの爽やかイケメンはどこ〜!!?
 
 
「は、はる、はると」
 
「ハハッ、びっくりした? 目ぇ丸くしちゃって、可愛い」
 
「か、かわい……!?」
 
 まさかの追撃。ぼふんと頬が熱くなる。
 
「ギャップ萌えってやつかな。俺も意外と、そういうの、できるんだぜ」
 
「も、萌え!?」
 
 えええ、ちょっと待って。
 確かに乙女はギャップに弱いものだけど、まさか晴人から喰らうだなんて予想外すぎるっ!
 
「なあ、ななみ。俺のこと、もっと知りたくねえか?」
 
「は、晴人のこと……?」
 
「そ。ひなたぼっこばかりが魅力じゃないからなー。太陽にはいろんな面があるんだよ」
 
 晴人の指がそっと顎に触れてくる。
 
 そのままくいっと持ち上げられて……顎クイだ!
 
「ヤケドしちゃうくらいキケンな一面とか、な?」

 ハツラツとした明るいオレンジ色の瞳が、逆光で薄暗くなる。その中でギラつく光から目が離せない。
 
「晴人……?」
 
「あのさ、ななみ。俺、ななみとずっと――」