てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 家を出て2つ目の角を左へ曲がる。
 
 学校にまっすぐ行くなら方向は逆なのだけれど、今日からはこの道のりで向かうことになるだろう。
 空き家が多くて人通りが少ないこの一角に入り、最後の確認に人影がないか辺りを見渡す。
 
 ――うん。大丈夫。

 てるてる坊主が男の子になった――なんてお父さんたちに言っても信じてもらえないだろうし、仮に信じてもらえたにしても、私の部屋じゃ全員暮らすには狭すぎる。
 
 ……それに、私もお年頃な訳だしっ!

 男の子4人と同棲(これって両親同居の場合も使える言葉?)するなんて刺激的すぎると言うものだ。
 だからこうして、家にいる時はてるてる坊主の姿をキープしてもらい、学校に行く途中で人間の姿になってもらうことにしたのだ。
 
「みんな、出てきていいよ」
 
 透明ポーチを開けながら呼びかける。
 すると色とりどりの光がパアアッと輝いて、一瞬目の前が真っ白になった。
 風が巻き起こるような感覚に足元がふらつく。
 
「お……っと」
 
 よろけた肩を支えてくれたのは晴人だった。
 
 もちろんオレンジのてるてる坊主ではない。人間の……カッコイイ、爽やかイケメンの姿になっている。
 
「大丈夫か?」
 
「う、うん。ありがと」
 
 抱きとめられているような体勢にドキドキしながらも、自分の足で立とうと力を入れる。

 その間も晴人は私の手を握って後ろにひっくり返らないようにしてくれていた。
 
「晴人って優しいね」
「そっか? 普通だと思うけどな」
 
 私が言ったことにピンときていないように目を丸くした晴人は自分で笑い飛ばすようにハハッと歯を見せて笑った。
 
 こちらまでつられて笑顔になる。
 
 ハツラツとした笑顔にすべて持っていかれそうになるけど、晴人は結構細やかな気づかいが得意みたい。
 
 昨日、転校生として紹介された時も、好きなスポーツの話題を持ち出して他の人との会話の糸口を作ってあげていた。
 
 鳴神がつっけんどんな態度をとるたびにうまく取り成しているタイミングを見ても、鳴神の個性を活かしつつ、周りとの調和も大切にしてどちらかに偏らないふるまいができるみたい。
 
 取っつきやすいという印象を与えてくれるのって、初対面には嬉しいものね。
 
 晴人は自分も周りも笑顔にしてくれる、まさに太陽のお天気男子だ。