てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 息が苦しくってお腹は痛くって、ひとりぼっちで、もう見せられないくらいひどい顔してる自覚はあるのに、あと何周走ればいいかわからなくなってくる。
 
 友だちも、一応「がんばれー」とか声はかけてくれるけど、ほとんどは走り終わった子同士でのお喋りに夢中。
 そんなものだよね。私だって速く走れていたらそっち側の人間だもの。
 そうなると、ようやくゴールした時、迎えてくれた彼女たちの笑顔やら言葉やらが一段と胡散臭く感じられるのだ。
 
 別に真の友情とか、わたしたち永遠に友だちとか、卒アルに寄せ書きするような綺麗事を信じているわけじゃない。

 この中学を卒業したらバラバラになるだろうし、同じ高校に進学したってそっちでの交友関係が別に出来上がるから、私たちの友情なんて今限りだ。

 この間古文の授業でやった平家物語風に言うなら「ひとえに風の前の塵に同じ」だ。
 
 でもね。
 だからこそ。
 ちょっとの間くらい夢見たっていいんじゃないかなーとは思う。

 こんな私の戯言を友達の千結(ちゆ)ちゃんに話してみたら「大袈裟だよ」と笑われた。
 
 千結ちゃんいわく、「絶対一緒に走ろうね」は「明日晴れるといいね」くらいの軽い挨拶らしい。
 
「こう言った後に雨が降ったからって裏切られたーとか、むなしいとか思わないでしょ? それと一緒だよ。他の子もそうなんじゃないの?」
 
 ……周りのほうが、私よりよっぽどドライで現実主義だった。
 
 でもいいんだ。
 夢見がちでも誰かに迷惑かける訳じゃないし。
 現に私が今やってることは誰かを巻き込んでるわけじゃないし。
 
 何をやってるのかって……それはまあ、夢見がちな女子中学生がマラソン大会を阻止するためのささやかな反乱だ。
 
 反乱といっても、とても平和で静かでささやかすぎるもの。

 神様だっておおらかな気持ちで見守ってくれるくらいのレジスタンス活動だ。