てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「ここ以外の席、認める気ないんで」

 ぶっきらぼうにそう言い放った鳴神に、私の周りに元いた席の面々がさあっと波が引くように後ずさる。
 
 私を中心とした四方を固めた4人は、最早自分たちのために用意されたとしか見えない座席に腰掛けたり寄りかかったりしながら、どいてくれたクラスメイトにありがとうとお礼を言っていた。

「俺ら、御空ななみを追っかけて転校してきたんだ」
 
「お、追っかけ!?」

 晴人の爆弾発言に思わずすっとんきょうな声が出た。

 
 追っかけって、まるで私がアイドルみたいじゃない!

 
「ななみさんがいれば何もいりません」
 
「い、いるでしょ! 絶対世の中には必要なものが他にもあるよ!」

 後ろからハグしてきた時雨さんの発言にも突っ込まざるをえない。

「こ、これで家でも学校でも、ずっと一緒にいられますね、ななみさん」
 
「それバラしちゃうの!?」

 うっとりと語りかけてくる八雲くんは幸せそうで私までほっこりしそうになるけど、一番刺激的なこと言ってる気がする。

「俺らは御空ななみのモンで、御空ななみは俺らのモン。っつーワケだから、余計な割り込みはするんじゃねーぞ。さもないと……」

 そこで鳴神はぐるりと教室を見渡した。
 視線で感電しそうな危険なまなざし。

 黙りこくった教室内で真っ先に声を出せたのは先生だった。さすがだ。

「待ちなさい、天野……ああどれも天野くんか。ええと天野鳴神くん。御空ななみくんと君たちは知り合いなのか? いったいどういう関係なんだね」
 
「関係か……」

 そこで鳴神は、天井を見上げてふむと思案した。
 
 次に鳴神が何を言い出すのかヒヤヒヤしながら見守るしかできない。

 鳴神は視線を落として私を見る。
 レモンイエローの電流がバチリと私を貫いた。
 
 鳴神は私の腕を引っ張って立たせると、ぐいと肩を抱き寄せる。
 過去イチの密着度合いに言葉が出てこない。

 
「シビれるくらい、甘いカンケイ?」

 
 きゃあああ、と黄色い悲鳴が炸裂した。
 
 先生がぽかんと口を開けている。
 
 千結ちゃんと莉亜ちゃんが手を取り合って固まっている。

 
 マラソン大会が中止になったのなんて吹っ飛ぶくらい、衝撃的なニュースが雷鳴と共に学校中に鳴り響いた。

 
 こ、これからどうなっちゃうの……!?