てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 みんなの視線が一気に集中する。
 
 先生に促されて教壇に上がった4人に、さっきにも負けない歓声が膨れ上がって爆発するようだった。
 
「今日からこのクラスでお世話になります。天野晴人です。 好きなスポーツはサッカー!」
 
「天野鳴神。よろしく」
 
「天野時雨と申します。お会いできて嬉しいです」
 
「あ、天野八雲……です。仲良くしてください……」

 先生が仲良くするんだぞーとかなんとか言っているようだけど、もうみんな聞いていなかった。
 
 まあ、それは私もだけれど。
 
「えーっ、転校生? それも4人も!?」
 
「先生、どうして全員うちのクラスに?」
 
「名字が同じだから兄弟?」
 
「みんなイケメンじゃん!」
 
「彼女いるのかなあ」
 
「そりゃいるだろ。俺との共通点なんて男子であること以外ないな……」
 
「私、一番左のオレンジくんがいい!」
 
「あのロングヘアさん素敵〜!」
 
「ぶっきらぼうな黄色くんもいいよね」
 
「何言ってるの。仔犬みたいなふわふわくん推しになるわ」
 
 しっちゃかめっちゃかとはまさにこのことだ。
 
 目をハートにしてる女子に自信喪失した男子。
 
 次から次へと超ド級の話題が出てきて、きゃあきゃあと口々に言いたいことばかりまくし立てるクラスは、学校中探してもうちのクラスだけだろう。
 
 この状態を収めるにはベテランの先生といえども骨が折れそうだ。

 ちょっと諦めかけた先生が「転校生諸君、ひとまず君たちの席は」と言いかけたところで、更に追い討ちをかけるように晴人が「だいじょぶっす。決まってるんで」とウィンクした。
 
 爽やかイケメンのウィンクに、ここはライブ会場かと聞きたくなるレベルの悲鳴が上がる。
 
 
 ちょっと待って。席が決まってる?
 どういうこと?
 
 
 キョロキョロと周りを見ても、空いた机と椅子は見当たらない。
 
 先生が用意するの忘れたのかな。
 
 空き教室から持ってきますって名乗り出たほうがいいかな。
 
 そんなことを考えながらそわそわしていると、4人が教壇を下りてこちらに向かってくるのが見えた。
 
 その足取りにはちっとも迷いが見えなくて、でも私の目には彼らのための机も椅子も見えなくて。
 
 
「俺らの席は――」
 
 ここ!

 私の真正面にでん! と立ち塞がるように鳴神。
 
 私の真後ろには守るように時雨さん。
 
 私の右横では晴人が人懐っこく笑いかけて
 
 私の左横には八雲くんが照れくさそうにはにかんだ。