それよりも――
「ねえ、ななみ。今の男の子誰?」
「もうひとり背の高いひとも見えたけど」
「もしかして知り合い?」
「どういう関係?」
「わ、わああ、待って!」
千結ちゃんと莉亜ちゃんだけじゃなくて、目ざといクラスの女子がわんさと押しかけてきた。
お喋りに夢中になってて気づいてないと思ったのにっ!
そこでチャイムが鳴ってくれたのが、まさしく天の助けだった。
私よりひと足早く教室に入っていた先生が「そこ、後ろの女子ぃ、席に着けー」と声をかけてくれて開放される。
「後で聞かせてね」
「逃げないでよ〜?」
「う、うん……」
どう説明すればいいのかさっぱりわからないまま、とりあえず頷いてしまう自分がいる。
流されやすいなあ、私……
席に着くと、先生がちらりと窓の外を見た。
「えー今日はマラソン大会だったが、見てわかる通りこの天気だ。中止することになった」
そこでピカッと稲光が教室を照らしたのは、やりすぎなぐらい劇的だった。
きゃーーっ!
と悲鳴が上がる。
雷に驚いたのと、マラソン大会中止を喜ぶのと、はたまた中止を残念がるのと……とにかくクラスじゅうがひっくり返るくらい賑やかになった。
担任は「落ち着きなさい」とか「静かに」とか一応言っていたけれど、そんなものでは焼け石に水だ。
私も感極まった莉亜ちゃんが抱きついてきたので、抱き締め返してぴょんぴょんと跳ねていた。
……あれ。そういえば、莉亜ちゃんには特に理由なくハグできたな。
みんながはしゃいでいる間にもゴロゴロと雷は鳴るし光るしで、鳴神が面白がって鳴らしている姿が目に浮かぶ。
これが落ち着くには時間がかかるだろうなあ……と浮き立つクラスでひとりだけ冷静でいる自覚があった私がぐるりと教室を見渡すと、先生と目が合った。
すると先生が意味ありげに頷く。
あ、そうか。
鳴神たちの紹介をしないと。
「莉亜ちゃん、こんなので驚いてたら今日は身が持たないよ」
「どういうこと?」
「それは先生が知ってるかな」
私が教壇に目を遣ると、莉亜ちゃんも千結ちゃんもまじまじと同じように先生を見た。
私たち3人がそうしているのにつられた他のみんなも教壇に何かあるのかと、自然と黙って前を向く。
そのうちみんなきちんと自分の席について、一応の秩序が戻ってきた。
これで準備は整った。
先生が、前のドアを引いて声をかけた。
「ねえ、ななみ。今の男の子誰?」
「もうひとり背の高いひとも見えたけど」
「もしかして知り合い?」
「どういう関係?」
「わ、わああ、待って!」
千結ちゃんと莉亜ちゃんだけじゃなくて、目ざといクラスの女子がわんさと押しかけてきた。
お喋りに夢中になってて気づいてないと思ったのにっ!
そこでチャイムが鳴ってくれたのが、まさしく天の助けだった。
私よりひと足早く教室に入っていた先生が「そこ、後ろの女子ぃ、席に着けー」と声をかけてくれて開放される。
「後で聞かせてね」
「逃げないでよ〜?」
「う、うん……」
どう説明すればいいのかさっぱりわからないまま、とりあえず頷いてしまう自分がいる。
流されやすいなあ、私……
席に着くと、先生がちらりと窓の外を見た。
「えー今日はマラソン大会だったが、見てわかる通りこの天気だ。中止することになった」
そこでピカッと稲光が教室を照らしたのは、やりすぎなぐらい劇的だった。
きゃーーっ!
と悲鳴が上がる。
雷に驚いたのと、マラソン大会中止を喜ぶのと、はたまた中止を残念がるのと……とにかくクラスじゅうがひっくり返るくらい賑やかになった。
担任は「落ち着きなさい」とか「静かに」とか一応言っていたけれど、そんなものでは焼け石に水だ。
私も感極まった莉亜ちゃんが抱きついてきたので、抱き締め返してぴょんぴょんと跳ねていた。
……あれ。そういえば、莉亜ちゃんには特に理由なくハグできたな。
みんながはしゃいでいる間にもゴロゴロと雷は鳴るし光るしで、鳴神が面白がって鳴らしている姿が目に浮かぶ。
これが落ち着くには時間がかかるだろうなあ……と浮き立つクラスでひとりだけ冷静でいる自覚があった私がぐるりと教室を見渡すと、先生と目が合った。
すると先生が意味ありげに頷く。
あ、そうか。
鳴神たちの紹介をしないと。
「莉亜ちゃん、こんなので驚いてたら今日は身が持たないよ」
「どういうこと?」
「それは先生が知ってるかな」
私が教壇に目を遣ると、莉亜ちゃんも千結ちゃんもまじまじと同じように先生を見た。
私たち3人がそうしているのにつられた他のみんなも教壇に何かあるのかと、自然と黙って前を向く。
そのうちみんなきちんと自分の席について、一応の秩序が戻ってきた。
これで準備は整った。
先生が、前のドアを引いて声をかけた。


