てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「ごめん、ちょっとトイレ」
 
「ん? 具合悪い? もう少しで先生来るよ」
 
「大丈夫、すぐ戻るからー」

 リュックを背負ったまま教室を出る。
 
 どこか静かなところ……
 
 ここからなら図書室かな。
 
 思ったとおり、近くには人の気配はなかった。
 
 リュックを下ろしてレモンイエローのてるてる坊主をそっと手で包み込む。

 バチバチッ!!

 冬のいやーな静電気みたいな感覚が手の中で暴れたかと思うと、目の前に鳴神が立っていた。
 
「そろそろショータイムだろ? 待ちきれなかったぜ」
 
「ふふ、じゃあその分もお願いね」
 
 マラソン大会中止を待ち望んでる莉亜ちゃんの顔が浮かぶ。どんなに喜んでくれるだろうか。
 
 そんな想像が顔に出ていたらしい。
 
「……そんなに楽しみかよ?」
 
「え!? いや、だって、莉亜ちゃんも雨が降って欲しくてたまらないし、昇降口でもどうなるんだろうってわくわくしてる子もいたし……みんな、喜ぶだろうなって」
 
 そう答える私の頬を、鳴神は片手でむぎゅっと掴んだ。
 
 
 なっ……
 
 いきなり何!?
 
 
「……ななみの役に立てるのは嬉しいけど……なんか面白くねえなあ」

「だ、だからって顔掴まないでくれる!?」
 
 
 ぜったい変な顔になってる!
 
 
「こらこら、レディには優しくしてくださいよ、鳴神くん」
 
 ぴちょんと雫のような音と共に時雨さんが現れた。
 鳴神の手を上から掴んで外してくれる。

 あー、びっくりした。
 
 やっぱり時雨さんは大人っぽくて素敵なひとだ。

 
「ですが……鳴神くんの気持ちもわかりますがね」
 
「そうそう。ヤキモチ妬いてるんだよな?」
 
 ぱっとその場が一気に明るくなったかと思えば晴人が廊下の壁にもたれていた。
 
 
 ヤキモチ? どういうこと?

 
 きょとんとする私の頬に、鳴神がまた触れてくる。
 
 
 また掴まれるっ!
 
 
 思わず目をぎゅっとつぶるけど、さっきみたいな痛みは感じなかった。
 
「……友だちだとか、家族だとか。ななみが周りを思いやれるヤツだってことはわかってるけどさ。そうやって他人のことばっかり気にかけてるの見ると、こう……なんつーか……」