てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「ななみ、天気予報では雨なんて言ってないぞ?」
 
「どうしてわざわざ持っていくの?」
 
「えーと……念のために?」
 
 出掛けにお父さんとお母さんから聞かれた時には本当のことを言う訳にもいかず、こうやってごまかした。
 
 そうそう、昨日はあのあとすぐにお母さんから「雨が止んだから線路の点検が済み次第帰れる」って連絡がきて、ほっとしたんだ。
 
 お父さんが帰る頃には道路の冠水もおさまってたみたいで、「すごい雨だったなあ」なんて夕飯の話題になったくらい。
 
「ねえ、今日もお仕事はいつもと同じくらいの時間まで?」
 
「? そうね。特にトラブルがなければ、だけど……」
 
「父さんは少し遅くなるかもしれん。昨日の雨で通行止めになった分の遅れを取り戻さないとな」
 
 お父さんは運輸系の会社に勤めている。
 だから昨日の雨でお仕事が溜まって大変になってるみたい。
 
 うーん、お父さんには申し訳ないけど……今日も雨に「する」予定なんだよねえ。
 
 そんなこと言っても信じてもらえないだろうから、ここはぐっと我慢することにした。
 
「そっか。頑張ってね」
 
「おう。ななみもマラソン大会だろ? 頑張れよ」
 
 
 う。中止にすると決まっているのに改めて言われると心にくる……

  
「昨日はマラソン大会がいやだーって泣いてたから、今朝はどんな顔して起きてくるかと思えば、意外と大丈夫そうで安心したよ」
 
「無理はしないで。遅くたっていいのよ。ななみの出せる力で走ってらっしゃい」
 
 何も知らないお父さんとお母さんの応援に苦笑いを返して、「行ってきまーす」と家を出る。
 
 ごめんなさい。でもどうしても嫌なものは嫌なの!