てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 こんなことで泣くんじゃないとお父さんに言われたけど、嫌なものは嫌だからしょうがない!
 お父さんは体育の成績がそこそこだったから正真正銘本物のド底辺の気持ちがわからないんだ!
 
 ちゃんと準備運動してから走ってるのにふくらはぎはすぐにつるし、もちろんご飯食べてからすぐに走ってもないのに脇腹は痛くなる。
 
 それでも必死に走る私の横を涼しい顔してすいすいと何人も追い抜かしていって、気づけば周回遅れになっているのなんて持久走の授業ではあるあるだ。
 
「絶対一緒に走ろうね」なんて友情にヒビが入る悪魔の言葉。

 みんな最初はそう言うんだ。
 
 最初の200メートルくらいまではまだいい。
 だけどそれを過ぎるとみんなのペースについていくのがキツくなる。
 
 そのうち先生が「サボるなー」みたいなことを言い出すともうダメ。

 私はもちろんサボってなんかなくても、一緒に走ってる子の九割九分は私に合わせたスピードなのだ。
 要するに全力ではない。

 まあ、先生の目があるし? 内申点のことも考えるとそうそうサボってられないのもわかる。

 だから……その先生による声かけが友情終了のお知らせみたいなもの。
 
 そのうち「ごめん、お先に」なんて誰かひとりが言い出す。

 そうすると、そこからはみんな口々に「ななみもがんばれー」とか「ちょっとだけ先いくね」とか、こっちを思いやれる余裕まで見せつつ足首に重石でもつけてた? って聞きたくなるくらいびゅんびゅん私の隣を走り去っていく。
 
 ひとり残された私も重石なんてポイ捨てして、みんなに追いつけるように走りたい。

 あの子たちのペースで、できることならくだらないお喋りしながら走っていたい。
 
 だけどそうはできないから周回遅れになるのであって……
 
 他の子がみーんなゴールして、トラックの中に入っておつかれーなんて言い合ってるのを横目に私はぐるぐる走るしかないのだ。