てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 「それでは改めまして自己紹介を。わたくしは時雨(しぐれ)。雨を司るお役目に就いております」
 
 さらさらのロングヘアが光るように揺れる。シャンプーはどこのを使ってるんだろう。
 鳴神や晴人より年上に見えるのは、その落ち着いた物腰のせいだろうか。
 
 隣できょろきょろと部屋を見渡していたグレーの癖っ毛くんが、時雨さんに促されてぴょこんと跳ねる。
 小動物みたいで可愛いな。
 
「ぼ、僕は八雲(やくも)。雨を呼んだり太陽を隠したりできる。綿菓子みたいには食べられないんだ……ごめんね」
 
 八雲くんはふわふわの髪を指で遊ばせるのが癖みたいだ。
 雲を食べるなんて小学生じゃないんだから謝らなくていいのに。
 
 そして晴人と鳴神は、ふたりの自己紹介を受けてなのか、改めて私に向き直った。
 
「晴人。見ての通り太陽を呼ぶぜ」
 
「鳴神。もう俺の強さは充分わかっただろ?」
 
 おとなしめな時雨さんと八雲くんに比べて、晴人と鳴神は我が強いタイプみたい。
 マンガに喩えるなら、ふたりの後ろに「ドヤァ」の効果音が書いてあるに違いない。
 
「俺たちはななみの想いと血から生命をもらった。だからななみのためなら空をどんな天気にでも動かすぜ」
 
 想いと、血?
 
「で、でも私、マラソン大会が嫌だから雨が降って欲しかっただけで……それに血だってたまたま画鋲で刺しちゃっただけだし」
 
 どんどん話が壮大になっていく気がして頭がこんがらがってきた。
 
 ほんの遊び。おまじないくらいの気持ち。
 ほんとに雨が降るなんて、それにこんなすごいことができる男の子(しかもカミサマ?)が4人もやってくるなんて……
 
「その力はもっとこう、世界平和? みたいなスケールの大きなことに使ったほうがいいのでは」
 
 そうだ。きっとそう。
 マンガとか映画でも、こういう能力者たちは世界を救うためとか何か大事件を解決するためとか、そういう大きな目的のために活躍してる。
 私みたいなただの中学生が、マラソン大会回避のために使っていい能力じゃない。
 だけど、私がそういうと4人は顔を見合せたあと首を横に振った。