私が目を回しそうになったので、まずは自己紹介をすることになった。
慌てて正座して彼ら4人に向き直る。
「み、御空ななみです! 中学生2年生。ええと……本日は? このたびはお日柄もよく……?」
勢いよく名乗ったはいいけれど、その後に続く言葉に詰まってしまうと、ぷっと誰かが噴き出した。
初対面なのに笑うなんてひどい……そう思いつつも自分が逆の立場だったらやっぱり笑っちゃうかもしれない。
怒ればいいのか反省すればいいのか、ぐちゃぐちゃな思考がそのまま顔に出ていたみたい。
そんな私に謝るようにとあるひとりが挙手をした。
ツンツンしたオレンジ色の髪にやっぱり同じ色の瞳だ。
「笑ってごめんな。俺は晴人! 晴れる人と書くとおり、お日様の加護を持ってるんだ。よろしくな」
歯を見せて笑う晴人くんは人懐っこそうだ。クラスにいたら一軍の人気者かも。
「ううん。私も変な挨拶したから……よろしくね、晴人くん」
「呼び捨てでいーよ。その代わり、俺もななみって呼んでいーか?」
「う、うん!」
流れるように下の名前で呼ばれてドキッとする。
そういえば鳴神は私になんの断りもなく呼び捨てしてきたな……
そう思い出して鳴神を見れば素知らぬ顔でそっぽを向いた。なにあれ!
それはさておき、次の人へ視線を戻す。
するとさらさらとしたネイビーブルーの長髪を揺らした男の子が「あの」と切り出した。
「ななみさんはお天気に関する緊急事態を迎えられているのでは? それなら自己紹介はおいおいということで、まずはお悩みをお聞きした方がよろしいのでは」
「……あっ!」
そうだ。この雷と雨をどうにかしないと。
「でも……」
「?」
「知らない人にいきなりお願いをするなんて、失礼じゃないですか?」
誰だって知らないひとにいきなり頼み事をされたらびっくりするし、内容によっては嫌な気持ちになるだろう。
鳴神は自分のことをカミサマと言っていた。それならなおさら、礼儀はきちんとしないといけない気がする。
そう考えて聞いてみたら、ネイビーブルーの男の子はふっと静かに唇をほころばせた。
低めの声は確かに男の子の声なのに、まるで綺麗なお姉さんみたいに手を口元に添えるからドキドキしてしまう。
「ななみさんは思慮深いですね。そんなあなただから、わたくしたちも馳せ参じたのでしょう」
「そ……そうです、か?」
「ええ。それで、ななみさんは何をお望みですか?」
これは引き受けてくれるというサインだろう。
「この雷と雨を止めて欲しいんです。元々は私が鳴神にお願いしたんですけど……お母さんとお父さん、この天気で帰ってこれなくなっちゃってて。私のせいで家族が大変な目に遭うなんて、いやだから」
そうだ。いくら鳴神が黒い雲を呼んだとはいえ、これは私が始めたこと。
そこはきっちりさせておくことなくお願いするのはだめなはず。
ネイビーブルーのお姉さん……もとい男の子を見つめてそう話せば、彼は少し面食らったみたいに目を丸くしたけれど、すぐに優しい表情を取り戻す。
「ななみさんはお強い子だ」
「強い? 私が?」
「ええ。発端が己の願いにあると認め、決着を自らの手でつけようとなさっている。己に向き合う強さがないひとには早々できることではありません」
そういうものなんだろうか。
私がきょとんとしていると、ネイビーブルーの彼は静かに目を伏せた。右手の人さし指と中指だけをぴんと立てて眉間の辺りにかざす。
「まずは雨……止めてご覧に入れましょう」
慌てて正座して彼ら4人に向き直る。
「み、御空ななみです! 中学生2年生。ええと……本日は? このたびはお日柄もよく……?」
勢いよく名乗ったはいいけれど、その後に続く言葉に詰まってしまうと、ぷっと誰かが噴き出した。
初対面なのに笑うなんてひどい……そう思いつつも自分が逆の立場だったらやっぱり笑っちゃうかもしれない。
怒ればいいのか反省すればいいのか、ぐちゃぐちゃな思考がそのまま顔に出ていたみたい。
そんな私に謝るようにとあるひとりが挙手をした。
ツンツンしたオレンジ色の髪にやっぱり同じ色の瞳だ。
「笑ってごめんな。俺は晴人! 晴れる人と書くとおり、お日様の加護を持ってるんだ。よろしくな」
歯を見せて笑う晴人くんは人懐っこそうだ。クラスにいたら一軍の人気者かも。
「ううん。私も変な挨拶したから……よろしくね、晴人くん」
「呼び捨てでいーよ。その代わり、俺もななみって呼んでいーか?」
「う、うん!」
流れるように下の名前で呼ばれてドキッとする。
そういえば鳴神は私になんの断りもなく呼び捨てしてきたな……
そう思い出して鳴神を見れば素知らぬ顔でそっぽを向いた。なにあれ!
それはさておき、次の人へ視線を戻す。
するとさらさらとしたネイビーブルーの長髪を揺らした男の子が「あの」と切り出した。
「ななみさんはお天気に関する緊急事態を迎えられているのでは? それなら自己紹介はおいおいということで、まずはお悩みをお聞きした方がよろしいのでは」
「……あっ!」
そうだ。この雷と雨をどうにかしないと。
「でも……」
「?」
「知らない人にいきなりお願いをするなんて、失礼じゃないですか?」
誰だって知らないひとにいきなり頼み事をされたらびっくりするし、内容によっては嫌な気持ちになるだろう。
鳴神は自分のことをカミサマと言っていた。それならなおさら、礼儀はきちんとしないといけない気がする。
そう考えて聞いてみたら、ネイビーブルーの男の子はふっと静かに唇をほころばせた。
低めの声は確かに男の子の声なのに、まるで綺麗なお姉さんみたいに手を口元に添えるからドキドキしてしまう。
「ななみさんは思慮深いですね。そんなあなただから、わたくしたちも馳せ参じたのでしょう」
「そ……そうです、か?」
「ええ。それで、ななみさんは何をお望みですか?」
これは引き受けてくれるというサインだろう。
「この雷と雨を止めて欲しいんです。元々は私が鳴神にお願いしたんですけど……お母さんとお父さん、この天気で帰ってこれなくなっちゃってて。私のせいで家族が大変な目に遭うなんて、いやだから」
そうだ。いくら鳴神が黒い雲を呼んだとはいえ、これは私が始めたこと。
そこはきっちりさせておくことなくお願いするのはだめなはず。
ネイビーブルーのお姉さん……もとい男の子を見つめてそう話せば、彼は少し面食らったみたいに目を丸くしたけれど、すぐに優しい表情を取り戻す。
「ななみさんはお強い子だ」
「強い? 私が?」
「ええ。発端が己の願いにあると認め、決着を自らの手でつけようとなさっている。己に向き合う強さがないひとには早々できることではありません」
そういうものなんだろうか。
私がきょとんとしていると、ネイビーブルーの彼は静かに目を伏せた。右手の人さし指と中指だけをぴんと立てて眉間の辺りにかざす。
「まずは雨……止めてご覧に入れましょう」


