てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「いっ……!」
 
 鳴神が。鳴神の牙が。
 私の傷口を押し開いていく。
 画鋲で刺しちゃった時は単純に痛かったけど、今、鳴神にされてる感覚はそれとは違う。
 
 熱くて痛い。
 
 だけど、それは鳴神に手首を掴まれてるからで。
 鳴神の唇のぬくもりを感じるからであって。
 ミスった自分になにやってるんだろうってがっかりするような、後悔まで混じる痛みじゃなくて――
 
 その感覚の正体を掴みかける直前、鳴神はそっと唇を離した。
 
「……悪い。痛かったな」
 
 鳴神の手が伸ばされる。
 目尻をそっと拭われた。
 
「……え…………?」
 
「泣いてるんじゃないかと、思って、さ」
 
 そう言われてぱちぱちと瞬きをしてみる。
 涙の感覚はなかった。
 
「だ、大丈夫だよ。このくらいで泣かないもの」
 
「そっか。ななみは……強いんだな」
 
 ふっと微笑んだ鳴神が、まるで遠くへ行ってしまうような、そんな錯覚に襲われる。
 たった今まで私の指に噛み付いてたのにおかしな話だけど……
 
「鳴神、あのね」
 
「おっと。話は後だ。なんのためにお前が痛い思いしたんだかわかんねーだろ」
 
 私の気持ちを知っているのかいないのか。
 うまくはぐらかすように鳴神は私にてるてる坊主を押しつけた。
 それも3つだ。
 
「俺の時みたいに、血を与えろ」
 
「鳴神の時って……あ!」
 
 さっきからそう言われてもピンときてなかったけど、ようやくわかった。
 あの時、画鋲を刺した出血を止めるためにてるてる坊主を使ったんだ!
 
 ってことはつまり……
 
 指の腹にぷくりと膨らんだ赤い血を見る。
 鳴神から受け取ったてるてる坊主を、順番に傷口に押し当てて血を拭った。
 
「さっきは、こうやったんだけど……」
 
 手の中のてるてる坊主たちを見つめる。
 オレンジと、ネイビーブルーと、灰色。
 まさか、これが、本当に……