てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

 どういうことかわからなくて首を傾げる。
 すると鳴神はいつもの調子を取り戻したのか、余裕そうに笑って大きな手をひらひらと振った。
 あの手のひらに触れられたことを思い出して、今更ながら頬が熱くなる。
 
「大方、どうして俺がここにいるのかもよくわかってねえみたいだからな。もう一度ななみが自分の目で確認してみるといいさ」
 
「確認って?」
 
「簡単なことさ。同じことをするんだ。俺を呼び出したのと同じように……」
 
 鳴神がテーブルの上を指さした。
 そこにはまだ飾られていなかったてるてる坊主があと3つ残っている。
 その中のひとつ、オレンジのペンで顔を描いたものを掴んだ鳴神は私にそれを握らせた。
 
「これって」
 
「あとは……そうだな。さっきの血はどうやって出した?」
 
「え? ああ、画鋲で刺しちゃって……」
 
 間違えて刺してしまった指の腹を見る。
 当たり前だけどとっくに血は止まってる。すると鳴神もそこをまじまじと覗き込んできた。
 
「な、なに」
 
 お医者さん以外に傷口を見せるなんて、なんだか恥ずかしくてケガしてない方の手で握り込むように隠すと、その手ごと鳴神は掴んできた。
 
 大きな手だ。指も長くて、ゴツゴツしてる。
 クラスには鳴神くらいの身長の男子もいる。
 だから男子の手なんて見慣れてるけど、それとは別のたくましさを感じて、鳴神に包まれてる自分の手がやけにちっちゃく感じた。
 
「ね……ねえ、なんなの?」
 
「んー……自分で言っておいてなんだけど、同じことさせるのは気が引けるな」

「な、なにそれ。鳴神がやれって言ったんじゃん」

「そりゃあそうだけどさ」
 
 そこで鳴神は言葉を切ると、私の頭をぽんと撫でた。
 
「ななみに痛い思いなんて、させたくねーから」

「……!」
 
 熱い。
 
 鳴神に撫でられた頭が。
 鳴神に囁かれた耳が。
 
「な、何言ってるの。鳴神ってキザだね!?」
 
 慌てて彼から離れようとすると、鳴神は私の手を取ったまま――塞がったばかりの傷口に唇を寄せた。
 
「な、るかみ」
 
「……でも、しゃーねえか。ななみ、一気に済ませるから我慢しろよ」
 
 なにを、なんて問いかける前に鳴神は口を開けた。
 口元から八重歯が覗いて吸血鬼みたいだな、なんて場違いなこと考えて、でもそれは一瞬で――