てるてる坊主を作っただけなのに、お天気男子の溺愛が止まらないのですが!

「すごい……すごいすごい! すごいよ鳴神! これならマラソン大会なんて飛んでっちゃう!」
 
「ははっ、お気に召して何よりだ。お望みならもっとド派手にしてやろうか」
 
 鳴神が親指と人さし指、中指の腹を擦り合わせて手の中にパチパチと小さな稲妻を作る。
 これが鳴神のチカラの素みたいだ。
 
 確かにすごいのは認めるけれど、大きな音は怖いし、フラッシュの光も強すぎる。
 このありえない状況にテンションが上がっていなければ、腰が抜けてるかもしれない。

「う……このくらいでいいよ」
 
「そうか? 遠慮すんなよ」

「遠慮じゃないけど……」
 
 窓の外ではまだゲリラ豪雨といってもいいくらいの天気が続いている。
 隣でドヤ顔をしている鳴神のことも忘れてピカピカ光る稲光を呆然と見つめていると、テーブルに置いたままのスマホがヴヴヴと鳴った。

「なんだ?」
 
「スマホ。多分お母さんから。仕事終わったから帰るよって連絡だと思う……」
 
 軽く説明したけどいまいちわかっていなさそうな鳴神に、ロックを解除したトーク画面を見せる。
 中身は予想通りだったのだけど……

「ああーっっ!!」
 
「うおっ!?」
 
 私の驚きっぷりが凄まじかったのか、鳴神がひっくり返った。それを横目に慌てて返信を打ち込む。
 私がひっくり返った時に助けてくれたのに薄情かもしれないけど、でもごめん、それどころじゃないのだ。

「ね、ねえ! この雷消して! 雨も!」
 
「あ? なんでだよ。俺を呼び出しといてそれはないだろ」
 
「お母さんの電車、この雷で止まってるって! 道路も冠水してるから、このままじゃお父さんまで帰って来られなくなっちゃう」

 お願い!
 
 そう手を合わせて頭を下げる。
 しばらくそうしていたあと、そっと恐る恐る見上げてみたら、鳴神は何故か手で口元を覆って顔を背けた。
 
 ……どういうこと?

「ね、ねえお願い……」
 
 そっと彼の袖をつまんで、くいくいと引っ張る。すると鳴神はようやくこちらを見てくれた。
 
「……わーかった。だから離せ」
 
「あ、服伸びちゃうね。ごめん」

「いやそうじゃなくて……ってああもういいか。雨を止めるなら……俺より適任がいるぜ」

「適任?」