怒涛の夏休みが始まり、花純の仕事は忙しさを増した。
海外旅行中のお客様のトラブルや、各支店から引き継いだ事務処理に追われ、お盆休みも交代で出勤する。
他の企業が一斉に休みになる中、花純は千鶴と、空いている5階のカフェでランチを食べていた。
「はあ、今朝の電車もスーツケース持った人でいっぱいだった。いいなー」
くるくるとパスタをフォークに巻きつけながら、千鶴がため息をつく。
「杉崎さん、俺だって働いてますよー」
カウンターから滝沢が声をかけてきた。
「同士じゃないっすか、俺たち。だから今夜ビールおごって」
「はあー? あんたはもう……」
「あ、もう一人同士がいた」
え?と、花純と千鶴は滝沢の視線を追う。
ちょうど光星がカフェに入ってくるところだった。
「上条さーん! ビールおごって」
「は? なに、いきなり」
「世間がお盆休みの中、せっせと働いてる同士でしょ? みんなで飲みに行きましょうよー」
すると千鶴が嬉しそうに身を乗り出す。
「いいね、行きたい! ね、花純」
千鶴は一度ちらりと意味深に光星を見てから、懇願するように花純に目で訴えてきた。
「あ、えっと……」
千鶴が光星と飲みに行きたいのは分かったが、どうしたものかと思案する。
すると光星が笑顔で話しかけてきた。
「お盆なのにお疲れ様です。森川さんと同じ、シリウストラベルの方かな?」
「はい! そうです。杉崎千鶴と申します」
「杉崎さんか、初めまして。クロスリンクワールドの上条と申します」
「初めまして! あの、社長さんでいらっしゃいますよね? どうしてそんなにお若いんですか?」
千鶴の問いかけに、光星はおかしそうに笑い出す。
「難しいこと聞くね。気づいたらこの歳だったからなあ。と言ってもそんなに若くないよ。34だから、20代の君たちからしたらオジサンじゃない?」
「とんでもない! 34歳で社長なんて。しかもクロスリンクワールドみたいな大企業の! あの、もしよろしければ色々お話聞かせていただけませんか? 仕事上がりにでも」
「そうだね。滝沢くんにも誘われたところだし、よかったらご一緒に。森川さんも」
急に話しかけられ、花純は焦る。
「あ、はい」
「じゃあ、定時後に50階のバーでね」
にこやかに笑ってから、光星は滝沢のいる注文カウンターに向かった。
「やったねー、花純。あー、楽しみ!」
うきうきした様子の千鶴に、そうだねと返事をした時、スマートフォンに光星からメッセージが届いた。
『強引にごめん。つき合ってることは、内緒にしておくから』
視線を上げると、目が合った光星は片手をわずかに挙げて詫びるような仕草をする。
花純は少し頬を緩めて頷いた。
海外旅行中のお客様のトラブルや、各支店から引き継いだ事務処理に追われ、お盆休みも交代で出勤する。
他の企業が一斉に休みになる中、花純は千鶴と、空いている5階のカフェでランチを食べていた。
「はあ、今朝の電車もスーツケース持った人でいっぱいだった。いいなー」
くるくるとパスタをフォークに巻きつけながら、千鶴がため息をつく。
「杉崎さん、俺だって働いてますよー」
カウンターから滝沢が声をかけてきた。
「同士じゃないっすか、俺たち。だから今夜ビールおごって」
「はあー? あんたはもう……」
「あ、もう一人同士がいた」
え?と、花純と千鶴は滝沢の視線を追う。
ちょうど光星がカフェに入ってくるところだった。
「上条さーん! ビールおごって」
「は? なに、いきなり」
「世間がお盆休みの中、せっせと働いてる同士でしょ? みんなで飲みに行きましょうよー」
すると千鶴が嬉しそうに身を乗り出す。
「いいね、行きたい! ね、花純」
千鶴は一度ちらりと意味深に光星を見てから、懇願するように花純に目で訴えてきた。
「あ、えっと……」
千鶴が光星と飲みに行きたいのは分かったが、どうしたものかと思案する。
すると光星が笑顔で話しかけてきた。
「お盆なのにお疲れ様です。森川さんと同じ、シリウストラベルの方かな?」
「はい! そうです。杉崎千鶴と申します」
「杉崎さんか、初めまして。クロスリンクワールドの上条と申します」
「初めまして! あの、社長さんでいらっしゃいますよね? どうしてそんなにお若いんですか?」
千鶴の問いかけに、光星はおかしそうに笑い出す。
「難しいこと聞くね。気づいたらこの歳だったからなあ。と言ってもそんなに若くないよ。34だから、20代の君たちからしたらオジサンじゃない?」
「とんでもない! 34歳で社長なんて。しかもクロスリンクワールドみたいな大企業の! あの、もしよろしければ色々お話聞かせていただけませんか? 仕事上がりにでも」
「そうだね。滝沢くんにも誘われたところだし、よかったらご一緒に。森川さんも」
急に話しかけられ、花純は焦る。
「あ、はい」
「じゃあ、定時後に50階のバーでね」
にこやかに笑ってから、光星は滝沢のいる注文カウンターに向かった。
「やったねー、花純。あー、楽しみ!」
うきうきした様子の千鶴に、そうだねと返事をした時、スマートフォンに光星からメッセージが届いた。
『強引にごめん。つき合ってることは、内緒にしておくから』
視線を上げると、目が合った光星は片手をわずかに挙げて詫びるような仕草をする。
花純は少し頬を緩めて頷いた。



