次の日。
「起きろ」
今日か…美奈が犯人を披露するのは。
「あのことみんなに言っといて」
よしっ。
「みんな!美奈が話したいことあるって!プール来て!」
「え?」
「何!?」
「どういうことよプール来いって」
やっぱみんな浮いてないなあ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「で?なによ」
つかさちゃんが明らかに不機嫌だ。
ゲームでストレスが溜まってるのかも。
周りを見渡す。
クラスメイトは全員で22人。
それなのに、ゲームの惨さを改めて知らせるように明らかに人数が少ない。
私と美奈、2人。
つかさちゃん、玲奈ちゃん、明日香ちゃん、秀美ちゃん、葵ちゃん、
そして、歩美ちゃん。
計8人…
こんなの残酷すぎる。
いっぱいいたクラスメイトと、ワイワイ話したのが随分前に感じる。
このゲーム、こんなに恐ろしかったんだ。
今更気づいても遅い。
「月美ちゃんを殺した犯人がわかった」
とたんに7人がざわつく。
人数の少なさで、誰が誰の声かはっきりする。
「犯人は…東条歩美よ」
「え」
一瞬の叫びしか出ないほどの衝撃だった。
「歩美ちゃんが!?」
「嘘つき!犯人はみゆきでしょ!それに私は第一発見者…」
「どうしてこんなに第一発見者であることを主張したいの?」
「!?
」
そういえば!
「第一発見者だから、犯人と疑われないようにしているんじゃ?」
「な…違う。みゆき…」
私たちも、歩美ちゃんは第一発見者だからと勝手に犯人の候補から覗いていた。
けどこれだけじゃ証拠が足りない。
「それに、歩美ちゃんはこの事件を殺人だと断定してた」
「それがどうした!」
「ここなに瑠樹に咲。こんな状況、自殺する人も多いはず。そんな中歩美ちゃんは『いったいだれがやったんだろ…』と言ってた」
そういえば、言ってた。
こんなゲームが行われて、しかも月美ちゃんは杏奈ちゃんを殺したから、自暴自棄だとかそういうのになって自殺してもおかしくない。
「また、歩美ちゃんが第一発見者として、プールなんて見つけにくい場所、普通は見つけられない」
今は水泳学習もやってないし、プールも普段閉鎖されている。
確かに見つけるには難しい。
「そして、決定的な証拠がある」
証拠がある…?
そう言って美奈が出したのは月美ちゃんのスマホだった。
「これがどうした!」
歩美は慌てているように感じる。
そしてボイスメモのようなアプリを開き、再生ボタンを押した。
『〇月×日、まだ夜明け前。それでも私は起きていた』
これ…日記?
「月美ちゃんは、ボイスメモを使って、日記をつけていた。実際に、フォルダには何100個の日記がある」
『夜中に歩美ちゃんに起こされた。プールに隠れていれば、ゲームに参加しずらいだろうって。グループの人に殺されないだろうって。でも歩美はその後どっか行った…』
『騙されやがった!』
『うわーーーーー!!!』
ドシンと音がする。
歩美の声は、いつものおどおどした態度と違っていた。
これが歩美ちゃん!?
やがてドボンと水しぶきの音がし、ゴボゴボと泡の音もする。
わざと月美ちゃんを溺れさせ、長い時間放置した。
そして静かになり、足音が聞こえる。
だんだん大きくなっていき、やがてボイスメモは止まった。
歩美…
「どう。これでわかった?」
歩美の方を見る。
笑ってるけど口だけ。目は黒くなっている。
「あははは。あーあ。バレちゃった」
信じられない…
「どうしてそんなことを!」
玲奈ちゃんが叫ぶ。
「あははは。あいつはゲームに参加しない方法があるって言って吊った。ものすごくノリやすいやつだった。みゆきを犯人だと言ったのも嘘」
もう一つ、知りたいことがある。
「ひかるちゃんは…」
「ああ、あいつ?あいつは危ないから吊った。美奈の持ってるスマホはパスワードを探すと言ってたな。最初はパスワードの0725が出るには相当時間かかると思ったが、あいつは勘が良すぎていいことに気付きやがった。誕生日がパスワード。これは相当ヒントになる。だから月美の誕生日を見に行ってる最中に殺した。トンカチで」
トンカチ!?!?!?
惨すぎる。
「でーも。バレちゃった。そーだ。自首する前にここにいる誰かの役職を明かそう。ここにいるやつらの役職は大抵知ってる」
「…っ!」
まずい!
ここで人狼だってバレたら、追放される!
「だーれーにーしーよーうーかーな」
頼む。当てないで。
「あははは。バンザーイ!今回当たったのは玲奈ちゃんでぇーす」
「…っ!?」
玲奈ちゃんが慌てている。
「ダメ!」
「玲奈か…こいつは凄いよ。コイツは…」
「やめて!」
一気に耳を塞ぐ。
しかしそれをも突き抜ける声が聞こえてきた。
「やめろってんだよ!」
明日香ちゃんの声…
「きゃああああー!」
明日香ちゃんは、歩美をプールに突き落とした。
「なっ…!」
そして水に沈めていく。
ゴボゴボと泡の音がする。
月美ちゃんと同じ…!
そして正当防衛用と言ってたカッターで歩美を刺した。
グサッ。
「ぎゃああああああ」
「ああああ…」
流石に玲奈ちゃんも困惑してる。
明日香ちゃんが人を殺すなんて…
やがて日に照らされてキラキラしてたプールの水面が、歩美の血に赤く染まっていく。
プールから上がる明日香。
「明日香…」
「ごめん。でもこうするしかなかった。私の役職はどうだっていいものだけど…玲奈の役職が明かされて、
玲奈が殺されるのは、どうしても嫌だったから」
つまり、明日香は玲奈ちゃんを守ろうとしたのか。
プールが静まりかえる。
「最後に言う。私は裏切り者」
裏切り者!?
「裏切り者って?」
「影で人狼を補佐する。人を殺す奴なんかに加担したくないから、ずっと黙ってたけど…」
ドキンと心臓が不穏な音を立てる。
「ごめん」
最後にそう言い残した明日香は、プールサイドを走り、壁を乗り越えようとする。
まさか!!
「明日香!」
玲奈ちゃんがプールサイドを走り、明日香ちゃんを追いかける。
そして壁を乗りこえようとする明日香を止めようと手を伸ばす。
しかし…
後一歩の所で、明日香は壁から真っ逆さまに落ちていった。
玲奈ちゃんがすぐに後ろを向いて、やがてドォンという音が聞こえた。
謎の心が空っぽになる感覚が襲う。
「明日香ちゃんが…」
周りのみんなも絶望してる。
「うっ、ううう…」
玲奈ちゃんが泣く姿なんて初めて見た。
「どうして?」
玲奈ちゃん?
「なんでみんなこう簡単に死んでいくの?ゲームによって、誰かに殺されて、自殺して…」
同じことを思った。
なんでみんなこう簡単にいなくなる。
「あやめグループの人達はそれを楽しんでるんでしょ。私たちが死んでいく姿を見て。どうしてそんなことができるの!明日香もみんなも、人を殺すような人じゃなかった!あなた達が!みんなを殺人鬼に変えた!それを罵ってるんでしょ!」
これは彼女の本当の叫びだ。
玲奈ちゃんの言う通りだ。
絶対おかしい。
偶然じゃない。
キーンコーンカーンコーン。
まるで煽るようなゲームの開始合図。
「こんなのおかしすぎるよーーーーーっ!!!!!!!」
おかしすぎる。
こんな状況でゲームをやる。
「うぁあぁああああああん」
本当ならみんな幸せだった。
大好きな友達がいて、楽しい青春を送れる。
そんな小さく儚い願いが、ゲームによって潰された。
玲奈ちゃんは立ち上がるとプールを後にする。
「あ、あの…」
葵ちゃんが声をかけようとするも、
「気にしないで」
と返された。
明らかに低い玲奈ちゃんの声。
偽りのない本当の友達を奪われ、絶望してる。
そして、彼女は最期の最後まで本当の友達を信じ続けた。裏切らなかった。
もし美奈が殺されたら、私はどういう気持ちになるんだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜が来る。
なんとも言えない気分。
『三間葵:じゃあ、この前の戦法で行くね』
『白宮瑠夏:うん』
玲奈ちゃんの文字にカーソルがいく。
カチカチッ。
夜が明けた。
『殺される人はいませんでした』
問題はここからだ。
『高木玲奈:もうおわかりだろうけど、私を吊って』
『音和つかさ:玲奈ちゃん…』
『高木玲奈:いいから吊って。もう見たくない。楽になりたい』
しんどい。
やがてチャットに何も送信されない状態が続き、かた苦しい時間が流れた。
そんな時間を終わらせたのは葵ちゃんだった。
『三間葵:あなたは友達を本当に思ってるんだね』
『高木玲奈:そう、かな…』
本当に思ってるのはわかる。
だからつらい。
『高木玲奈:たぶん、そう思ってるから余計…』
『三間葵:大切だからこそ、その分まで生きようと思わない?』
『高木玲奈:え』
どういうこと?
『三間葵:あなたは明日香ちゃんが大事な存在。だからこそ、明日香ちゃんの分まで生きなきゃいけない。これはあなたの義務なの』
義務…
同じように大事な友達を亡くした。
だからこそ、葵ちゃんはそんなことが言えるのかもしれない。
『高木玲奈:じゃあ、殺されるのは…?』
問題はそこだ。
『三間葵:私』
えええ!?
『高木玲奈:ええ!なんで!?葵ちゃんも春香ちゃんと瑠樹ちゃんのために生きるべきーー』
『三間葵:本当はそうしたかった。でも、さやかちゃんがいってた。『殺すなんてバカなこと、私にはできない』って。この言葉でハッとした。自分はなんでそうしないといけないからって人を殺してるんだって。そう、人狼は私』
人狼がいなくなるのは嫌だけど、葵ちゃんがそういう決意をしてくれてよかったと思った。
『三間葵:だから私に投票して』
マウスを持つ手が震える。
葵ちゃんの文字にカーソルがいく。
カチカチッ。
『投票結果』
三間葵: 6票
…じゃあね。
『三間葵:よかった…ありがと…死んだら、さやかちゃんにお礼を言わないとな』
ビーーー!
『高木玲奈:まって!』
必至の叫びもむなしく、画面に『三間葵が死亡しました』と表示される去れる。
小部屋からみんなが出てくる。
葵ちゃんは死んだ。
玲奈ちゃんが悲しんでる。
でも、その顔はどこか決意したような顔に見えたーー
死亡者:三間葵、藤重明日香、東条歩美
生存者:5人
8ー3=5
「起きろ」
今日か…美奈が犯人を披露するのは。
「あのことみんなに言っといて」
よしっ。
「みんな!美奈が話したいことあるって!プール来て!」
「え?」
「何!?」
「どういうことよプール来いって」
やっぱみんな浮いてないなあ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「で?なによ」
つかさちゃんが明らかに不機嫌だ。
ゲームでストレスが溜まってるのかも。
周りを見渡す。
クラスメイトは全員で22人。
それなのに、ゲームの惨さを改めて知らせるように明らかに人数が少ない。
私と美奈、2人。
つかさちゃん、玲奈ちゃん、明日香ちゃん、秀美ちゃん、葵ちゃん、
そして、歩美ちゃん。
計8人…
こんなの残酷すぎる。
いっぱいいたクラスメイトと、ワイワイ話したのが随分前に感じる。
このゲーム、こんなに恐ろしかったんだ。
今更気づいても遅い。
「月美ちゃんを殺した犯人がわかった」
とたんに7人がざわつく。
人数の少なさで、誰が誰の声かはっきりする。
「犯人は…東条歩美よ」
「え」
一瞬の叫びしか出ないほどの衝撃だった。
「歩美ちゃんが!?」
「嘘つき!犯人はみゆきでしょ!それに私は第一発見者…」
「どうしてこんなに第一発見者であることを主張したいの?」
「!?
」
そういえば!
「第一発見者だから、犯人と疑われないようにしているんじゃ?」
「な…違う。みゆき…」
私たちも、歩美ちゃんは第一発見者だからと勝手に犯人の候補から覗いていた。
けどこれだけじゃ証拠が足りない。
「それに、歩美ちゃんはこの事件を殺人だと断定してた」
「それがどうした!」
「ここなに瑠樹に咲。こんな状況、自殺する人も多いはず。そんな中歩美ちゃんは『いったいだれがやったんだろ…』と言ってた」
そういえば、言ってた。
こんなゲームが行われて、しかも月美ちゃんは杏奈ちゃんを殺したから、自暴自棄だとかそういうのになって自殺してもおかしくない。
「また、歩美ちゃんが第一発見者として、プールなんて見つけにくい場所、普通は見つけられない」
今は水泳学習もやってないし、プールも普段閉鎖されている。
確かに見つけるには難しい。
「そして、決定的な証拠がある」
証拠がある…?
そう言って美奈が出したのは月美ちゃんのスマホだった。
「これがどうした!」
歩美は慌てているように感じる。
そしてボイスメモのようなアプリを開き、再生ボタンを押した。
『〇月×日、まだ夜明け前。それでも私は起きていた』
これ…日記?
「月美ちゃんは、ボイスメモを使って、日記をつけていた。実際に、フォルダには何100個の日記がある」
『夜中に歩美ちゃんに起こされた。プールに隠れていれば、ゲームに参加しずらいだろうって。グループの人に殺されないだろうって。でも歩美はその後どっか行った…』
『騙されやがった!』
『うわーーーーー!!!』
ドシンと音がする。
歩美の声は、いつものおどおどした態度と違っていた。
これが歩美ちゃん!?
やがてドボンと水しぶきの音がし、ゴボゴボと泡の音もする。
わざと月美ちゃんを溺れさせ、長い時間放置した。
そして静かになり、足音が聞こえる。
だんだん大きくなっていき、やがてボイスメモは止まった。
歩美…
「どう。これでわかった?」
歩美の方を見る。
笑ってるけど口だけ。目は黒くなっている。
「あははは。あーあ。バレちゃった」
信じられない…
「どうしてそんなことを!」
玲奈ちゃんが叫ぶ。
「あははは。あいつはゲームに参加しない方法があるって言って吊った。ものすごくノリやすいやつだった。みゆきを犯人だと言ったのも嘘」
もう一つ、知りたいことがある。
「ひかるちゃんは…」
「ああ、あいつ?あいつは危ないから吊った。美奈の持ってるスマホはパスワードを探すと言ってたな。最初はパスワードの0725が出るには相当時間かかると思ったが、あいつは勘が良すぎていいことに気付きやがった。誕生日がパスワード。これは相当ヒントになる。だから月美の誕生日を見に行ってる最中に殺した。トンカチで」
トンカチ!?!?!?
惨すぎる。
「でーも。バレちゃった。そーだ。自首する前にここにいる誰かの役職を明かそう。ここにいるやつらの役職は大抵知ってる」
「…っ!」
まずい!
ここで人狼だってバレたら、追放される!
「だーれーにーしーよーうーかーな」
頼む。当てないで。
「あははは。バンザーイ!今回当たったのは玲奈ちゃんでぇーす」
「…っ!?」
玲奈ちゃんが慌てている。
「ダメ!」
「玲奈か…こいつは凄いよ。コイツは…」
「やめて!」
一気に耳を塞ぐ。
しかしそれをも突き抜ける声が聞こえてきた。
「やめろってんだよ!」
明日香ちゃんの声…
「きゃああああー!」
明日香ちゃんは、歩美をプールに突き落とした。
「なっ…!」
そして水に沈めていく。
ゴボゴボと泡の音がする。
月美ちゃんと同じ…!
そして正当防衛用と言ってたカッターで歩美を刺した。
グサッ。
「ぎゃああああああ」
「ああああ…」
流石に玲奈ちゃんも困惑してる。
明日香ちゃんが人を殺すなんて…
やがて日に照らされてキラキラしてたプールの水面が、歩美の血に赤く染まっていく。
プールから上がる明日香。
「明日香…」
「ごめん。でもこうするしかなかった。私の役職はどうだっていいものだけど…玲奈の役職が明かされて、
玲奈が殺されるのは、どうしても嫌だったから」
つまり、明日香は玲奈ちゃんを守ろうとしたのか。
プールが静まりかえる。
「最後に言う。私は裏切り者」
裏切り者!?
「裏切り者って?」
「影で人狼を補佐する。人を殺す奴なんかに加担したくないから、ずっと黙ってたけど…」
ドキンと心臓が不穏な音を立てる。
「ごめん」
最後にそう言い残した明日香は、プールサイドを走り、壁を乗り越えようとする。
まさか!!
「明日香!」
玲奈ちゃんがプールサイドを走り、明日香ちゃんを追いかける。
そして壁を乗りこえようとする明日香を止めようと手を伸ばす。
しかし…
後一歩の所で、明日香は壁から真っ逆さまに落ちていった。
玲奈ちゃんがすぐに後ろを向いて、やがてドォンという音が聞こえた。
謎の心が空っぽになる感覚が襲う。
「明日香ちゃんが…」
周りのみんなも絶望してる。
「うっ、ううう…」
玲奈ちゃんが泣く姿なんて初めて見た。
「どうして?」
玲奈ちゃん?
「なんでみんなこう簡単に死んでいくの?ゲームによって、誰かに殺されて、自殺して…」
同じことを思った。
なんでみんなこう簡単にいなくなる。
「あやめグループの人達はそれを楽しんでるんでしょ。私たちが死んでいく姿を見て。どうしてそんなことができるの!明日香もみんなも、人を殺すような人じゃなかった!あなた達が!みんなを殺人鬼に変えた!それを罵ってるんでしょ!」
これは彼女の本当の叫びだ。
玲奈ちゃんの言う通りだ。
絶対おかしい。
偶然じゃない。
キーンコーンカーンコーン。
まるで煽るようなゲームの開始合図。
「こんなのおかしすぎるよーーーーーっ!!!!!!!」
おかしすぎる。
こんな状況でゲームをやる。
「うぁあぁああああああん」
本当ならみんな幸せだった。
大好きな友達がいて、楽しい青春を送れる。
そんな小さく儚い願いが、ゲームによって潰された。
玲奈ちゃんは立ち上がるとプールを後にする。
「あ、あの…」
葵ちゃんが声をかけようとするも、
「気にしないで」
と返された。
明らかに低い玲奈ちゃんの声。
偽りのない本当の友達を奪われ、絶望してる。
そして、彼女は最期の最後まで本当の友達を信じ続けた。裏切らなかった。
もし美奈が殺されたら、私はどういう気持ちになるんだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜が来る。
なんとも言えない気分。
『三間葵:じゃあ、この前の戦法で行くね』
『白宮瑠夏:うん』
玲奈ちゃんの文字にカーソルがいく。
カチカチッ。
夜が明けた。
『殺される人はいませんでした』
問題はここからだ。
『高木玲奈:もうおわかりだろうけど、私を吊って』
『音和つかさ:玲奈ちゃん…』
『高木玲奈:いいから吊って。もう見たくない。楽になりたい』
しんどい。
やがてチャットに何も送信されない状態が続き、かた苦しい時間が流れた。
そんな時間を終わらせたのは葵ちゃんだった。
『三間葵:あなたは友達を本当に思ってるんだね』
『高木玲奈:そう、かな…』
本当に思ってるのはわかる。
だからつらい。
『高木玲奈:たぶん、そう思ってるから余計…』
『三間葵:大切だからこそ、その分まで生きようと思わない?』
『高木玲奈:え』
どういうこと?
『三間葵:あなたは明日香ちゃんが大事な存在。だからこそ、明日香ちゃんの分まで生きなきゃいけない。これはあなたの義務なの』
義務…
同じように大事な友達を亡くした。
だからこそ、葵ちゃんはそんなことが言えるのかもしれない。
『高木玲奈:じゃあ、殺されるのは…?』
問題はそこだ。
『三間葵:私』
えええ!?
『高木玲奈:ええ!なんで!?葵ちゃんも春香ちゃんと瑠樹ちゃんのために生きるべきーー』
『三間葵:本当はそうしたかった。でも、さやかちゃんがいってた。『殺すなんてバカなこと、私にはできない』って。この言葉でハッとした。自分はなんでそうしないといけないからって人を殺してるんだって。そう、人狼は私』
人狼がいなくなるのは嫌だけど、葵ちゃんがそういう決意をしてくれてよかったと思った。
『三間葵:だから私に投票して』
マウスを持つ手が震える。
葵ちゃんの文字にカーソルがいく。
カチカチッ。
『投票結果』
三間葵: 6票
…じゃあね。
『三間葵:よかった…ありがと…死んだら、さやかちゃんにお礼を言わないとな』
ビーーー!
『高木玲奈:まって!』
必至の叫びもむなしく、画面に『三間葵が死亡しました』と表示される去れる。
小部屋からみんなが出てくる。
葵ちゃんは死んだ。
玲奈ちゃんが悲しんでる。
でも、その顔はどこか決意したような顔に見えたーー
死亡者:三間葵、藤重明日香、東条歩美
生存者:5人
8ー3=5



