「…でさ」
海斗が背もたれに体を預けながら、ゆるく話し始める。
「帝華ってのは、ただの暴走族じゃねえの」
その一言で、自然とみんなの視線が海斗に集まる。
「縄張りはあるし、見回りもする。でもーーー無差別に暴れるとか、そういうのはやってねえ」
「…そう、なんですか」
それが本当だとしたら、思っていたよりもずっと”秩序”がある。
「むしろ逆」
楓が口を挟む。
「面倒ごと潰す側」
「女絡みとかクスリとか、その辺な」
海斗が続ける。
「放っとくと街が荒れるから、先に潰す」
軽く言うには重すぎる内容に息をのむ。
『…じゃあ、帝華って…』
言いかけて、言葉を探す。
「善人?」
海斗が代わりに言って、くすっと笑う。
「それはねえよ」
あっさり否定する。
「俺等は普通に”悪い側”」
でも、と少しだけ視線を落とす。
「守るもん決めてるだけ」
その一言が、やけに重く残る。
(…守るもの)
一瞬、お姉ちゃんの顔が浮かぶ。
ーーー守られてた、はずなのに。
いつからお姉ちゃんは彼らにとって”守るもの”じゃなくなったんだろう。
「で、組織の話な」
空気を切り替えるように、海斗が軽く手を叩く。
「トップは見ての通り、玲雅」
ちらっと綾藤を見る。
「総長な。で、俺が副総長。その下に幹部が3人」
楓がスマホをいじりながらひらひらと手を振る。
「俺とー」
柊が無言のまま小さく視線だけ動かす。
「…俺」
蓮は何も言わないが、海斗が顎で示す。
「あと蓮な。んで、さらにその下に下っ端。」
「…何人くらい、いるんですか?」
自然に出た質問。
海斗は少し考えてから、
「だいたいーーー50人くらいかな」
と答えた。
「時期によって多少増減するけどな」
50人。
思っていたより、多い。
「幹部は別格なんだよ~」
楓がにこにこしながらそう言った。
「基本、全部まとめるのは俺らで、下っ端は俺らに使われる側って感じ。あとは姫ってのもあるけど、今はいないから気にしなくていい。ま、簡単に言えばこんなとこかな。」
頭の中で聞いた内容を整理する。
総長、副総長、幹部、下っ端ーーーそして姫。
ちゃんとした”組織”。
想像していた帝華とはかけ離れていて、少し混乱する。
どうして、こんなにしっかりした組織だったのに、お姉ちゃんが死ぬことになったんだろうか。
「…今日はここまでにしとけ」
不意に綾藤が口を開く。
「帰るぞ」
『え、あ…わかりました」
楓が「もう帰すの?過保護じゃん」と笑い、柊は何も言わずにテレビに視線を向ける。
蓮だけが、最後までこちらを見ていた。


