……って、なんでだよ。なんでこっち来んだよ。
あんまり近くで飲むとこ見られたらちびちび飲みで誤魔化せないじゃねぇかよ……とひとり焦る俺を前に。
千歳はちょっと首を傾げて、こちらの顔を覗き込んできた。
「苦手なんでしょ」
鼻腔を甘くくすぐる匂い。
さら、と揺れる細い前髪。
揶揄うような色を含んだ上目遣い。
──ドキッ。
…………。
…………『ドキッ』?
…………ああ、図星を突かれたからドキッとしちまったのか。
いや、そうだよな。びっくりした。まさかこの俺がコイツにときめいたのかと思った。ははは。そんなこと、太陽が西から昇って地面から雨が降るくらい有りえねぇ。
今日マジで調子悪りぃな……と舌打ちする俺をよそに、千歳は涼しい表情で静かに手を差し出してくる。
