「忘れ物ですか?」
俺の思考を遮るようにして、千歳が再び顔を覗き込んでくる。
「……」
しつこいのが癪に触ったので何も返さずにいると、千歳は直接何かを言うでもなく、静かに「へぇー……」と目を細めた。
『傘も忘れてスマホも無くすとか……霞先輩って結構だらしないんですね(笑)』
何ひとつ口にしてないにも関わらず、そんな言葉が背後に透けて見えるような──こちらを完全に下に見た目。
……。
…………。
…………クッッソ腹立ってきた。
このままナメられっぱなしで終わるのは我慢ならない。今の千歳は完全に俺に勝った気でいるんだろうが、そう簡単に勝ち逃げさせてたまるか。
俺は鞄を回して肩に引っ掛けると、片手をポケットに突っ込んで千歳を振り返った。
