「なんでいるんだよ」
「雨脚が弱まるのを待ってたんですよ。けど止む気配ないから帰ろうかなって」
言いながら、傘立てからスッとシンプルなビニール傘を引き抜く千歳。
うわっ、それ俺が一瞬パクろうかと思ってたやつ……話しかけられる前に掴んでなくてガチで良かった。
コイツの傘をコイツ本人の目の前で盗もうとしてたとか、さすがにメンツが持たないし一生ネタとして擦られる。
不幸中の幸いに密かに安堵していると、俺の視線の動きを読んだのか、千歳は自分の傘と俺の顔を静かに見比べた。
そして──
悪戯っぽく微笑んで、軽く首を傾ける。
「入っていきます?」
「……はぁ?」
予想外すぎる一言に、思わず素っ頓狂な声が漏れた。
意味がわかんねぇ、嫌に決まってんだろ?!俺お前のこと嫌いだし……それに、お前だってぜってー俺のこと嫌いだよな??どういう神経してたら、嫌いな野郎同士で相合傘しようって発想になるんだよ。新手のイジメか??
