しばらくの間の後、不意に遥風が口を開く。

「……前から気になってたんだけどさ。お前、なんで『問題児』を演じてんの?」

その質問に、少し息を呑む。

今まで彼は、私の撮影中と普段の性格のギャップにあえて触れてこなかった。お互いに、あんまり踏み込んだ質問はできないって遠慮してた部分があったから。

……けど、やっぱり気になるよね。

ちょっと躊躇った。皆戸遥風の素性はよく知らないし、どれだけ信頼できる人間なのかはまだ分からない。
けど、どうせ男装のことはバレてるんだし、少しでもわけを知っておいてもらった方がやりやすいかも。

それに──なんとなく、信頼してみてもいいかもしれないし。

そう考えて、私は自分についてほとんど話すことにした。

妹を人質に取られ、無理矢理男装させられオーディションに参加させられたこと。芸能界に入るのはまっぴらごめんだから、デビューだけして即脱退できるように、今から手を打っているということ。

そんな経緯を大まかに伝えると、遥風は顔を引き攣らせてしばらく沈黙していた。

そして、静寂を破った第一声。

「……お前の親、頭大丈夫?」

全面同意です。