「……京、帰りになんか買ってきてほしいものある?」
「ん?」
「食べ物とか、漫画とか。なんでもいいよ」
「なに、どしたの急に」
スマホをサイドテーブルに置いて、私の顔を覗き込んでくる京。
スタンドライトに透け、さらりと揺れる髪。
その優しい表情を前に、後ろめたくて視線が合わせられず、目を伏せてしまった。
よくよく考えてみたら、今私がやってることって、自分の目的のために京を利用してるってことで。
それって──自分のキャリアアップのために京を利用した若原清架と何が違うんだろう。
目的が正しいとはいえ、そこに行き着くまでの過程で人を傷つけちゃったら、それってやっぱり違う気が……。
背後で規則的に響く雨音のせいか、ネガティブな思考ループに入ってしまって、顔を上げられない。
と、そんな私の頭上から「千歳」と呼びかけが落ちて。
反射的に顔を上げた、その瞬間──
ちゅ。
唇に、軽く触れる感触が落ちた。
