「あと千歳も借りてくから」
名案は0.1秒で崩れ去ることとなった。
都合の悪いときは逃げるくせに、欲しいものはちゃっかり取っていく──それが峰間京。さすがの要領の良さ。
私は抗議の暇すら与えられず、当然のように腕を引かれ、立ち上がらされる。
「おいっ!千歳くんをどこ連れてくんだよ!」
「人気のないとこ。覗くなよ〜♡」
「ふざけんなお前ぶち殺すぞーーーッッ!!」
「京先輩のエッチーー♡」
今にも暴走機関車と化しそうな明頼を慌てて取り押さえる茉白ちゃん、デカい声であけすけな野次を飛ばしてくる夏葉ちゃん。
そんなカオスな状況を背に、私は峰間京に腕を引かれ、半ば強引にラウンジから連れ出された。
うーわ、周囲の人たちみんな見てるって……。
せめてメッセージで呼び出すとか、もう少し器用なやり方はできないのかな。いや、でもこの人の場合、私との親密さを周囲に見せつけたい意図がありそう。
知らない生徒から恋愛目的で接触されることが少ないのも、多分この人のせいなんだろうな……なんてうっすら察してしまう。
心の中でちょっと口を尖らせつつ、人気のない階段まで来たところで、私はやっと口を開いた。
「ねぇ……用事くらい先に言ってから連れ出してよ」
ぐいぐいと腕を引いたまま階段を上っていく京の後ろ姿に、ボソリと不満を落とすと。
ようやく彼は踊り場に立ち止まって、くるりとこちらを振り返った。
