入学式後、土日を挟んで、本格的に新年度が始まった。
新しい出逢いに学校中が浮き足立ち、校内にはキラキラとした明るい空気が漂っている。
新しい友達。憧れの先輩。綺麗な校舎。
新入生たちは、これまで味わえなかった『普通の青春』の幕開けに、胸を躍らせているようだった。
──と、そんな中で、私はというと。
浮き足立つどころか、号砲を待つ短距離選手ですかってレベルで、一人神経をきりきりと尖らせ続けていた。
すべては、この週末で練ってきた計画を完璧に遂行するため。
新入生期間をエンジョイする余裕なんて微塵もない。
一ヶ月という短いミッション期間の最初のフェーズ、ここでしくじったら全てが崩れるんだから、一秒たりとも気が抜けないのは当然だ。
第一フェーズのルールは、至ってシンプル。
茉白ちゃんの半径十メートル以内に九条霞が入った途端、セコムとして出動し、九条霞の接触を阻めばいい。
挫折知らずのお坊ちゃまに劣等感を抱かせる焚き付けフェーズ、完璧にやり切ってみせようじゃないか。
と、そんな固い決意のもとで始まった、最初の一週間──
月曜日。
「おい天羽茉──」
「茉白ちゃんおはよ!」
「千歳くん!おはよ〜」
「……」
火曜日。
「天羽──」
「見てもう充電2%」
「何やってんの千歳〜。モバ充あるよ」
「…………」
水曜日。
「あも──」
「何飲んでるの?」
「ほうじ茶ラテ。一口いる?」
「…………チッ」
木曜日。
「天羽茉白は……?」
「千歳くんとカフェテリア行ってましたよ」
「…………あいつクソ野郎…………」
