「ってかまぁ、そもそも拒否権なんてねーけど──」
言いながら、そのまま茉白ちゃんの肩に手を置こうとする。
ぎゅっ、と身構えるその姿が、なんだか昔の私の立場と重なった。
……分かる、怖いよね。
こういう強い男子に人前で迫られた時の絶望感は、誰よりも理解できる。
だからこそ、困っている彼女を放って置けなくて、どうにか助け舟を出そうとして──
気づけば私は、パシッと霞の手を掴んでその場に固定していた。
「……は?」
……うわっ。
やってしまった……ミッション云々そっちのけで、また考えなしの行動を。
霞の彼の鋭い視線をまともに受け、私は内心冷や汗ダラダラ状態。
どうしようどうしよう……と内心パニックになりつつ、表面だけは穏やかな微笑みを保って、できるだけ角が立たないようやんわりと言う。
「エマって、一応恋愛禁止なんですよ。そうだよね?茉白ちゃん」
「えっ?あ、あぁ……そう、そうです」
私が話を振ると、慌てたように何度も頷いてくれる茉白ちゃん。
決してこれは嘘じゃない。確か私の記憶だと、一応会社の規約ではそう書かれていたはずだ。
実際は形骸化しまくっていて、普通に色恋沙汰は蔓延っているけれど──それでもきちんと成文化はされているのだから、これで充分断る理由になるはず。
