気を散らすために、なんとかもう少しポジティブに捉えてみよう。
例えば今のこの構図って、完全に少女漫画のヒーローとヒロインじゃないだろうか。
浮き足立つ有象無象の女たちには目もくれず、唯一靡かない鈍感美少女を溺愛する総長……いや総長のボンボン息子か。ダメだ一気に台無しだ。冷酷総長様のボンボン息子に溺愛されてます!って一体どこに需要が?
と、失礼すぎる思考を巡らせる私の隣で、めげずに茉白ちゃんを口説き続ける霞。
「あー、エマだろ?うちの事務所と仲良いから大丈夫だって」
「あ、はは……」
視線を泳がせ、なんとか断る理由を探そうとしている茉白ちゃん。
情報通の彼女のことだから、彼のバックに一体誰がついているのかは当然知っているはず。
だからこそ、機嫌を損ねるのが怖くて、きっぱり断れないのだろう。
そしてその断りたい理由も、なんとなく想像できる。
きっと、彼女のプロ意識の高さゆえだ。
茉白ちゃんは夏葉ちゃんと違って、言葉の端々からアイドルという仕事への誠実さが垣間見える。ゴシップは好きそうだけど、夏葉ちゃんが暴走しそうになったら必ず牽制してるし。
きっと、応援してくれるファンのことを裏切りたくないんだろうな。
少し同情してしまう私とは違って、肝心の霞は微塵も引く気配を見せない。
