「夏葉ちゃんは別にお前のこと求めてねぇだろ」
「グエッ」
頭上から、聞き慣れた声。
明頼の首根っこをむんずと掴み、強引に引き上げ立たせたのは──
「何すんだよ、雪斗っ……!!」
そう。猛獣使い・兎内雪斗だった。
「お騒がせしましたー。全部虚言なんで気にしないでくださーい」
周囲に頭を下げながら、どうにか見物人たちの騒ぎを鎮めてくれる雪斗。
普通に救世主すぎて、後光が差して見える。Yシャツのみで袖を捲るシンプルな制服スタイルも相まって爽やかな先輩オーラ全開、一層頼もしい。
一生ついていきます、先輩……。
と、そんな雪斗に続いて、人混みを縫って出てきたのは──
「もー!なに勝手に飛び出してってんのさ雪くん!」
彼の双子の兄、兎内陽斗だった。
弟のシンプルな装いとは対照的な、着崩せるとこは全部着崩したもはや私服のような制服ルック。
さっきの夏葉ちゃんといいこの人といい、あんなにお洒落なブレザーがあるのになぜわざわざ私物のパーカーを羽織ってくるんだ。
「もうちょっと見物してようって言ったのに〜」と頬を膨らませて可愛らしく怒る彼に、苛立って目を細めてしまう。
この悪人め……今後こいつに何が起こっても絶対に助けてやらないことにしよう。
