さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「千歳くん、使う?」


背後から、スッ、と差し出されたポケットティッシュ。


振り返ると、そこに立っていたのは──

茉白ちゃんと夏葉ちゃんだった。


……あっ。


「アァッ?!?!」


案の定、奇声を上げて勢いよく尻餅をつく明頼。

このタイミングでの彼女たちの登場は、今の状態の彼にとっては猛毒レベルの追い討ちだ。

私は黙って、追加のティッシュを明頼に押し付けた。本気で失血死するんじゃないの、この人……。


「ましろん……なっちゃん……千歳くんまで……推し大集合ハーレムじゃん……」

「千歳くんハーレムの一員にされてるけど大丈夫そ?」

「いつものことだから」


俺もう死ぬんだ……と悟りを開いて菩薩みたいに穏やかな顔になる明頼。その横で、私はスイモニの二人と立ち話を始める。


「知ってる?この人のこと」

「めっちゃ知ってるよ。うちらのオタクでしょ?」

「明頼くん」

「エェッ?!知ってくれてるんすかッ?!?!」

「確かYouTubeの切り抜きで見たんだよね〜」

「『エマプロの奇行種・小山明頼の激キショムーブを見よう!』ってやつ」

「開示してぇ」


テンションが上がったり下がったりで忙しい明頼。

推しに変な切り抜き見られるのは可哀想だけど、明頼の場合言われても仕方ないことをしてるから同情もできない。

名前覚えられてただけ良かったじゃん、元気出しな……。