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……私、榛名千歳は、背後から聞こえる大絶叫を背にちょっと肩をすくめた。
さっきから周囲に会話が全部丸聞こえで、ちょっと、いや、かなり気まずい。運動部が声デカいのは、どこの学校でも共通なのかな。
っていうか、ちゃんと男子用の制服着てるのに、分からないものなんだろうか。
別に騙そうとしているわけではないけれど、結果的にショックを受けさせてしまうのが申し訳ない。
私より全然レベルの高い美少女なんか周り見渡せばゴロゴロいるだろうから、狙うなら別の子狙ってね……。
そんなことを思いつつ、私は気を取り直して、改めて周囲を観察してみる。
見渡す限り、ここにいるのは新入生だけっぽい。京も私よりちょっと早く寮出てたし、きっと在校生と新入生の動線は違うんだろうな。
だとしたら、二年生の九条霞とはまだ接触できなさそうか。
狙うべきは放課後だろう。
それまでは、必要以上に周囲と関わることなく、目立たないように気配を消してやり過ごすしかない。
特に男と関わると、またさっきのみたいな被害者が出そうだし……できるだけ不要な接触は控えよう。
そんなことを自分に言い聞かせながら、私は一人、東怜学園高校の無駄に綺麗な校舎に足を踏み入れるのだった。
