さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



バンッ!!!


叩きつけられたドアの振動が、安っぽい壁を伝って空気を震わせた。


荒々しく廊下を遠ざかるヒールの音が徐々に聞こえなくなり──

残ったのは、静寂と、甘ったるい残香のみ。


そんな中、九条霞は、何が起きたのか分からないといった表情で、ポツンと一人頬を押さえていた。

けれど、数秒後。


「……痛ぇんだよ、凶暴女が」


遅れて苛立ちが追いついてきたのか、ぐしゃりと乱雑に髪をかき上げ、思いっきり舌打ち。

そのままドサッと上体をベッドに沈め、天井に視線を投げた。

今年に入ってから、彼はとうに十回は同じような事例を経験していた。けれど、そこから何かを学ぶ様子は微塵も見られない。



(……複数の女と遊んで何が悪いってんだよ。俺と寝れる幸せな女が増えんだから、むしろ慈善事業だろ)



腫れた頬の痛みを紛らわすように、枕元に置いてあったスマホを再び手に取り、連絡先画面をスクロールし始める。

先ほどの女の代わりとして、この部屋に呼び出す女を物色しているのだろう。