その翌日。
パート変更の件は、遼次のラップアレンジを披露した上での多数決で現状維持になった。
琥珀の猛反対はあったものの、遼次のラップがあった方が楽曲のクオリティが上がることは明らかだったので、取り巻きたちも説得に回ってなんとか引き下がらせた。
遼次が、振り付けをあまり変えなくて良いようなフロウでラップを作ってくれたので、振りの変更もつつがなく終えることができた。
そこまでは良い。
問題は、私の周囲の人間関係が大きく変わった──というか、ややこしくなったこと。
「千歳、今日の服珍しくね」
いつもの会話みたいに、なんでもないトーンを装って話しかけてくる遥風。
今日の私の服は、首筋を隠せるようなタートルネックっぽいデザインだった。
昨日付けられた痕は化粧で隠そうとしていたんだけど、汗をかいたら流れ落ちてしまうことに気づいて、なんとか隠そうとした結果がこれ。
首筋にキスマなんて、スキャンダルの火種すぎるから、なんとしてでも隠さないと。
……それにしても、事情を知っているくせして、何食わぬ顔で話しかけてくる遥風、なんていうか、ほんといい性格してるよなぁ。
確かに、昨日の私が疲労のせいで思考が鈍っていて、ぶっ飛んだことをしてしまったのも悪いけれど。
「……ちょっと暑い」
不満げに口を尖らせ、軽く腕を捲る。
冬とはいえ、動いていれば暑くなるから、本当は首元が開いている服を着たかったけど……そしたら、誰かさんに『男漁り』とかなんとか言われるから。
「ん、顔赤いし」
頬に手を添え、するりと優しく撫でてくる遥風。
急なスキンシップに、びくっと肩が震えた。
今まで、2人きりのときか、栄輔の前でしか堂々と触ってくるようなことは無かったのに……。
まるで周囲に見せつけるかのような遥風の行動に、違和感を覚える。
やっぱり、昨日私がしたことへの反撃みたいな意図なんだろうか。
これ、一手でも間違えた途端に人間関係が崩れるっていう良い例だと思う。
気まずくて、遥風から視線を逸らした瞬間──今度は遼次とバチッと視線が合った。
……え、もしかしてずっと私たちのこと見てた?
「……千歳、暑いなら暖房下げる?」
と思ったけれど、いつもと違わない淡々とした彼の口調に、ホッと胸を撫で下ろす。
今日の態度は普段通りってことは……多分、昨日の彼の赤面は、ただ動揺しただけ。きっとそうだ。
「ありがと、下げてほしいかも」
遼次が私にそこまで懐いていないという事実に、少し機嫌が良くなった勢いで軽く微笑んで返してしまう。
その瞬間、彼の表情が一瞬だけ揺らぐ。感情を押し隠すように口元を歪めたかと思うと、ふいと顔を逸らし、無言で暖房の設定を下げ始めた。
何……?
パート変更の件は、遼次のラップアレンジを披露した上での多数決で現状維持になった。
琥珀の猛反対はあったものの、遼次のラップがあった方が楽曲のクオリティが上がることは明らかだったので、取り巻きたちも説得に回ってなんとか引き下がらせた。
遼次が、振り付けをあまり変えなくて良いようなフロウでラップを作ってくれたので、振りの変更もつつがなく終えることができた。
そこまでは良い。
問題は、私の周囲の人間関係が大きく変わった──というか、ややこしくなったこと。
「千歳、今日の服珍しくね」
いつもの会話みたいに、なんでもないトーンを装って話しかけてくる遥風。
今日の私の服は、首筋を隠せるようなタートルネックっぽいデザインだった。
昨日付けられた痕は化粧で隠そうとしていたんだけど、汗をかいたら流れ落ちてしまうことに気づいて、なんとか隠そうとした結果がこれ。
首筋にキスマなんて、スキャンダルの火種すぎるから、なんとしてでも隠さないと。
……それにしても、事情を知っているくせして、何食わぬ顔で話しかけてくる遥風、なんていうか、ほんといい性格してるよなぁ。
確かに、昨日の私が疲労のせいで思考が鈍っていて、ぶっ飛んだことをしてしまったのも悪いけれど。
「……ちょっと暑い」
不満げに口を尖らせ、軽く腕を捲る。
冬とはいえ、動いていれば暑くなるから、本当は首元が開いている服を着たかったけど……そしたら、誰かさんに『男漁り』とかなんとか言われるから。
「ん、顔赤いし」
頬に手を添え、するりと優しく撫でてくる遥風。
急なスキンシップに、びくっと肩が震えた。
今まで、2人きりのときか、栄輔の前でしか堂々と触ってくるようなことは無かったのに……。
まるで周囲に見せつけるかのような遥風の行動に、違和感を覚える。
やっぱり、昨日私がしたことへの反撃みたいな意図なんだろうか。
これ、一手でも間違えた途端に人間関係が崩れるっていう良い例だと思う。
気まずくて、遥風から視線を逸らした瞬間──今度は遼次とバチッと視線が合った。
……え、もしかしてずっと私たちのこと見てた?
「……千歳、暑いなら暖房下げる?」
と思ったけれど、いつもと違わない淡々とした彼の口調に、ホッと胸を撫で下ろす。
今日の態度は普段通りってことは……多分、昨日の彼の赤面は、ただ動揺しただけ。きっとそうだ。
「ありがと、下げてほしいかも」
遼次が私にそこまで懐いていないという事実に、少し機嫌が良くなった勢いで軽く微笑んで返してしまう。
その瞬間、彼の表情が一瞬だけ揺らぐ。感情を押し隠すように口元を歪めたかと思うと、ふいと顔を逸らし、無言で暖房の設定を下げ始めた。
何……?
