一つツッコみたいところがあるとすれば、なんであなたは自由に気配を消せるんですかってことくらい。
廃倉庫での時もそうだったけど、透明人間化できるスキルか何か持ってるの?壮絶な過去を生き抜くためのサバイバル技術の一環?
峰間京に関してはとにかく分からないことが多すぎる……。
急な乱入者の登場に、天馬は助手席に乗せていた葵としばらく顔を見合わせていたけれど──
やがて二人とも、観念したようにため息を吐いた。
「……まぁいいわ。お前はむしろ知っといた方がいいかもしれないし」
「二人とも乗って」
車の鍵が解除されると、京は微塵も遠慮せずに自分からドアを開けて乗り込む。
相変わらずの図太さを前に呆れ混じりのため息を吐きつつ、私も続いて後部座席に乗り込んだ。
車の中とは思えない上質なホテルみたいな香りに、思わず背筋が伸びる。
葵の車に乗った時は結構ごちゃっとした印象だったけど、天馬の方は整頓されていて、車の芳香剤にまできちんと気を遣ってる感じ。
愛車だろうから、決して雑な振る舞いはできないな……と考えていたところで、ちょうどその思考の真反対に突っ走る男が一人。
「吸っていい?」
「逆にいいと思う?乗せるだけにもヤニ臭いからクソ嫌なのに」
「はい」
案の定、秒で切り捨てられたので黙って従う葵。負け戦はやめよう、という心意気が窺える見事なまでの引き下がり方。
でも、その聞き分けの良さがあるのに、なぜ頑なにトライし続けるのだろう。
