けれど、その一方で、何事もなく彼が去ってくれたことに安心してしまう自分もいて。
というのも、白藤天馬が来ると、また何か警告めいたことを言われそうで、少し身構えてしまっていたからだ。
用もないのにダル絡みしてくる葵と違って、天馬は用事がないと私に接触してこなさそうだし。
今回も不本意を装っていたとはいえ、何か重大なことを伝えにきてるのかもしれないと思って怖かったのだ。
けれど、どうやら今回は本当に静琉にはめられてカモられただけだったらしい。ただただ可哀想なだけの人だった。疑ってごめんなさい……と、一人反省していた、ちょうどそのときだった。
ヴーッ。
ポケットに入れていたスマホが、低く振動した。
……なんだろう。
特に深く考えず取り出して、画面に視線を落とす。
そして、その送り主と文面を目にした瞬間──
絶句した。
『s
今出て来れる?裏に停めてある黒のA8』
初期アイコン。
『s』のアルファベット一文字の名前。
天馬から警告を受けたあの日に、彼に教えてもらった連絡用アカウントだ。
