……白藤天馬に関しては、本気で掴めなさすぎる。
優しい常識人なのかと思いきや、キッチン破壊したり爆音アラームで鼓膜大破壊してきたり、なんか肝心なところで抜けてるんだよね。
でもまぁ榛名優羽とかいう非合法ジャイアンから生まれたことを考えたら、この程度で済んでることに感謝すべきなのかな……?
呆気に取られる私たちをよそに、天馬はソファで死んでいる葵を揺すって「ほら早く」と急かす。
「震えが止まらない……」
「PTSDか。いいから行くぞ」
「俺その音鳴らした人間全員殺すって決めてる」
「いいよ殺せよ。そしたらお前三十万全額負担な」
「……」
抵抗をやめた葵の首根っこを掴み、ずるずるとゴミみたいに引きずっていく天馬。
「じゃあなー」と爽やかな笑顔で去っていく彼を、「ご、ご馳走様です……」と呆然と見送る一同。
最後の最後まで、彼の猛獣使いっぷりは流石だった。
天馬さん、分身してこっちのオーディションにも治安維持係として参加してくれないだろうか。
彼のような圧倒的な権力者がいてくれれば、死ぬほど心強い。できればずっとここに残ってほしかった……と、到底無理な願いすら浮かんできてしまう。
