さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



栄輔って、分かりやすいようでなんか掴めない。

年上として憧れられてるのかと思ったら、急に年下にするように可愛がられて、どういうスタンスでいればいいのか分からなくなる。

パーソナルスペースを測りながら、ほんの数ミリずつ侵食してくる──そんな彼の距離の詰め方が、何気に一番危ないのかもしれない。

純粋そうな子だからってあんまり油断してちゃダメだな……と、密かに気を引き締めていた、その時。


──ピピピピッ!!


弛んだ空気を一瞬にして切り裂くようなアラーム音が、大音量で個室内に鳴り響いた。

携帯のアラームにデフォルトで設定されている、耳を殺しにくるような不快なアラーム音。

うとうとと眠りに落ちかけていた参加者たちが漏れなくビクッと反応して跳ね起き、対照的に葵は銃に撃たれたようにドサッとその場に倒れた。


なっ、何事……?!


視線を巡らせてその音の源を辿ると、どうやら机に置かれた天馬のスマホのようだった。

天馬は「あぁ、ごめんごめん」と悪びれもせず笑いながら、ようやくアラームを止めた。


「俺らそろそろ出なきゃいけない時間だわ。会計こっちで済ませてオーダーも締めちゃうけど、お前らはまだゆっくりしてていいから」