──三時間後。
スタッフさんたちの懸念通り、コンテンツ撮影中何回か殺伐とした空気は漂ったものの、天馬や翔や雪斗なんかの常識人組の鎮火活動でなんとか丸く収まって。
私は数十万の肉たちを一つも焦がすことなく、最適な焼き加減で提供するという任務を達成できた。
某関西人と某イケメンモテモテが悪ふざけでどんどん追加注文をするから、一時はどうなることかと思ったけれど、やはり食べ盛りの男子集団は強い。みるみるうちに皿の肉は減っていき、早くも残飯処理とデザートのフェーズに突入中だ。
ここまで来ればもうくだらない喧嘩を始めようとする人間も減ってきて、個室内には、ゆるっと弛緩した空気が静かに漂っていた。
……けれど、だから私もリラックスできているか、と言ったらそうでもなくって。
なんなら、さっきから左隣のパーソナルスペースを侵食されすぎて、全くもって落ち着かなかったりする。
「はー?ヒロイン重っ……萎えてきた。せっかく課金したのに」
重いはこっちのセリフですけど、とツッコんでしまいたくなる。
というのも、峰間京この人、さっきから当然のような顔で私の肩に頭を預けてきているのだ。
私のことをクッションか何かだと勘違いしているのか、完全にリラックスしきったままスマホを縦スクロールして漫画を読んでいる。
動くたびに彼の髪がサラッと首筋にかかってくすぐったいし、時折思い出したみたいにすぅ、と匂いを嗅いでくるのもやめてもらいたい。犬?
