さっきまでの喧騒が嘘みたいに静まり返ったのと同時に、開けられたままの引き戸の向こうから、黒服の店員が銀のワゴンを引いて現れる。
「失礼します。ご注文の品でございます」
さっき私たちだけで頼んでいた肉が到着したようだ。
恭しい仕草と共に、次々とテーブルに並べられていく高級そうな霜降り肉たち。
私にはどの肉がどんな種類なのかは全く分からなかったけれど、全ての皿が芸術品のように完璧に盛り付けられていて見惚れてしまう。私の中の焼き肉の概念が、どんどん覆されていく……。
わーっと一気に盛り上がる参加者たちだったけれど、そんな中、唯一難しそうな顔をしていたのが葵だった。
目の前に置かれた脂の乗った肉を凝視してしばらく眉根を寄せていたけれど──やがて恐る恐るといった様子で、黒服の店員に問う。
「……この五皿って全部同じ種類ですよね?」
「はい。そちら匠の一寸・幻牛ブリアンでございます」
「ねえ誰シャトーブリアン五皿頼んだの?!?!」
先ほどまでの余裕はどこへやら、一瞬にして取り乱す葵。隣の天馬も、「はっ?!」と素っ頓狂な声をあげる。
どよめく個室の中、ニヤニヤと笑いながらすっと挙手したのは──
椎木篤彦だった。
