さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……あ、ちょっと待って。これはいけない展開だ。これ以上やると、多分アレが来る。


いち早く危機を察知して、思わず自分から身を引こうとするけれど──

それよりも一瞬早く。


「遥風くんこんにちは」


ベリッ!!!!


凄まじい勢いで、遥風が私から引き剥がされた。

出た……スキンシップ警察・天鷲翔。


ニコニコと爽やかに笑っているけれど、瞳の奥の温度は氷点下。その暴力的なまでの剥がしっぷりを見るに、シャレにならないくらいキレてる。

萎縮して思わず後ずさる私とは対照的に、遥風は本気でうざったそうな顔。


「クソ邪魔なんだけど」

「お前の席一番端だから。行くよ早く」

「は?無理無理」

「来ないんだったらお前が千歳に貸したパーカーで毎晩」

「行きます」


なんだ……?今、天鷲翔がとんでもないカードを出しかけた気がしたけど大丈夫だろうか。毎晩……?

困惑しながら、引きずられていく遥風を目で追っていると、不意にぞくりと冷気を感じた。


視線の主は、振り返った天鷲翔。

遥風に肩を組みながら、こちらにブリザード級に冷たい瞳を向けてきていた。タートルネックにダークネイビーのジャケットというフォーマルな格好も相まって、美形特有のとんでもない威圧感を放っている。

怖すぎる……顔からして辞退しろって言ってきてるんだよな。言っとくけど私ちゃんと辞退しようとしましたからね。死ぬか告発か選べって言われて死を選びましたからね。許して。