そう密かに後悔しつつ、遼次に軽く質問をする。
「じゃあさ。なんでこの業界に入ろうと思ったの?」
私の言葉に、遼次はちょっと考えてから、ふっと自嘲気味に笑った。
「……父さん、しょーもない奴だったけど、パフォーマンス中はホントカッコ良くて、ずっと俺の憧れで。一度もまともに俺の目を見てくれたことはなかったけど、俺が表舞台で活躍すれば、どこかで見つけてくれるかなって」
大嫌いなのに、認めて欲しくてたまらない。
そんな一見矛盾するような願望だけど、私も痛いほどに理解できた。
昔の私もそうだったな、と思い返す。
どれだけ頑張っても、振り向いてくれないのは分かってる。けれど、心のどこかで期待してしまう。
いつか、『よく頑張ったね』って褒めてくれるんじゃないか。頑張っていれば、いつか、無条件に愛してくれる日が来るんじゃないか。
そんな淡い期待を抱いて、母親のためにレッスンに明け暮れた幼少期。
その時の自分を見ているようで、胸がギュッと締め付けられた。
「俺がオーディションに出てること、知っててくれねーかな……って、知っても見ないか」
自嘲気味に、ふっと笑みをこぼす遼次。
その姿が、あまりに痛々しくて……どうしようもなく、過去の自分と重なって。
──気づけば、私は俯く遼次の頭に手を伸ばしていた。
細く柔らかな髪の毛が、さらりと指の間を通る感触。
ゆっくりと顔を上げる遼次。隣で、驚いたように目を見開く遥風。
「はっ、?」
──遼次の声で、ハッと我に返った。
「じゃあさ。なんでこの業界に入ろうと思ったの?」
私の言葉に、遼次はちょっと考えてから、ふっと自嘲気味に笑った。
「……父さん、しょーもない奴だったけど、パフォーマンス中はホントカッコ良くて、ずっと俺の憧れで。一度もまともに俺の目を見てくれたことはなかったけど、俺が表舞台で活躍すれば、どこかで見つけてくれるかなって」
大嫌いなのに、認めて欲しくてたまらない。
そんな一見矛盾するような願望だけど、私も痛いほどに理解できた。
昔の私もそうだったな、と思い返す。
どれだけ頑張っても、振り向いてくれないのは分かってる。けれど、心のどこかで期待してしまう。
いつか、『よく頑張ったね』って褒めてくれるんじゃないか。頑張っていれば、いつか、無条件に愛してくれる日が来るんじゃないか。
そんな淡い期待を抱いて、母親のためにレッスンに明け暮れた幼少期。
その時の自分を見ているようで、胸がギュッと締め付けられた。
「俺がオーディションに出てること、知っててくれねーかな……って、知っても見ないか」
自嘲気味に、ふっと笑みをこぼす遼次。
その姿が、あまりに痛々しくて……どうしようもなく、過去の自分と重なって。
──気づけば、私は俯く遼次の頭に手を伸ばしていた。
細く柔らかな髪の毛が、さらりと指の間を通る感触。
ゆっくりと顔を上げる遼次。隣で、驚いたように目を見開く遥風。
「はっ、?」
──遼次の声で、ハッと我に返った。
