さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



京は多分、弱さを前に出すのが苦手な子なんだろう。怖いとか、寂しいって言えない。

代わりにすぐ余裕ぶって、すぐ冗談にして、身体で距離を詰めて確かめようとしてくる。

……だったら、私くらいは、彼のSOSに気づいてあげないとダメだよね。


そんなことを思いながら、私はやんわりと京の肩を押し除けようとする。


「とりあえずそういうことだから一旦離れて──」


そこで、異変に気づく。京が微塵も退く気配を見せない。


……ん?


慌てて視線を上げると、目の前の彼はニコニコといつもの笑みを浮かべていた。


「必要ないよね?ここ、カメラの死角だし」

「はっ……?」


その言葉に見上げると、確かに私たちの真上に監視カメラがあった。監視カメラの死角はカメラの真下。

京はそれを知っていて、いつの間にか私をその位置まで自然に誘導させていたのだ。


「さっきの理由でいけば、ファンに見えないとこならいちゃいちゃオッケーってことでしょ」

「いやっ、違う違う違う」

「なんで?」

「そんなことしてたら普段もつい距離近くなっちゃうじゃん」

「大丈夫だって、俺そういうとこ器用だし」


京が一歩、距離を詰めてくる。

壁と京の身体に挟まれ、完全に逃げ場がない。