……なんだ、京か。
だーれだ、ってやってくる気だ。もう何ヶ月も同じ部屋で過ごしてるんだから、匂いで分かるよ……。
と、ちょっと肩の力が抜けた、その瞬間。
耳元に、ちゅ、と柔らかい唇の感触。
「……っ?!?!」
予想外すぎる行動に思いっきり動揺して、反射的に壁際にズザッ!!と後ずさってしまった。
なっ、何……?!
心臓バックバクで顔を赤くする私を前に、京は心底楽しそうに肩を揺らして笑っている。
「あはっ、びっくりした?かわい〜」
……遥風や栄輔もだけど、エマプロってどこでも構わずキスしてくる人が多すぎる。この場所ってセクハラ合法地帯なの?恨めしく思って、思わずじとっとした視線を向けてしまう。
京はシャワー後なのだろう、今日の本番ではかき上げていた前髪を既にラフに下ろしていた。素肌に大きめのジップアップパーカーだけ羽織ってきたようなルーズスタイル。一応社長室に行くのに部屋着そのままで出て来れるの、流石としか言いようがない。
と、内心少々呆れつつも、私は気を取り直して壁から身を起こそうとする。
「くだらないことしてないで、早く行……」
と、その言葉を、最後まで言い切る前に。
京の手が、トン、と私の横の壁に置かれて、逃げ道を塞いだ。
……今度は何なの。
文句を言おうと思って見上げたけれど──
その表情を見て、思わず息を止めた。
瞳に、いつものような揶揄いの色がない。
