「あ、どうもー……」
ひょこっとスタジオへ顔を出す。
床に腰を下ろしていた遼次と遥風が、ふっとこちらを向いた。
2人とも部屋着っぽい……もう22時近いし、当然か。
今まであまり遼次と絡んだことがなかったから、まず何を話せばいいか少し困る。
「……遼次って俺と同い年だよね?ピアス、校則引っかかんないの?」
とりあえず、話題に困ったら目についたものについて話す。遼次の、軟骨までバチバチに開いたピアスに触れる。
遼次は私の質問に、なんでもないように返した。
「別に……俺、学校全然行ってないし」
軽く耳元に触れ、そう言う遼次。
少し意外に思ったけれど、そこまで驚かない。今の時代、学校に通う以外の道を選ぶ人はたくさんいる。
学校よりも、音楽を極める道を取ったとか、おおかたそんなとこじゃないのかな。
そう思っていると、遼次の目がちょっと意外そうに見開かれる。
「詮索してこねーの?」
その瞳に、少し好意がちらついた気がした。
……あ、このままだと、好感度上がっちゃう。そう瞬時に察知して、私は慌てて身を乗り出す。
「いや、気になる。なんで?」
私の言葉に、遼次が少し気まずげに目を伏せた。うわ、今のもし放送されたら、デリカシー無さすぎって炎上するかな……。
遼次の好感度と視聴者の好感度を気にして行動するの、めっちゃ神経使って疲れる。
「……まあ、調べられたらいずれバレるだろうから、自分から話すけど」
ちょっと疲れたような声音で話し始める遼次。
「親が、犯罪やって逮捕されて。母さんはホストに通って自分の稼ぎほぼ使っちゃうから、俺が学校行かないで、音楽活動で稼いでいこうと思って」
隣で、遥風が少し息を呑む音が聞こえた。
「犯罪って?」
遥風の質問に、遼次が表情を変えずさらりと言う。
「多分知ってると思いますよ。風浦巽──麻薬使用容疑で逮捕」
意外な名前に、息が止まった。
それは、およそ5年前の出来事。絶対エース・仙李の自殺後、バラバラになった『Schadenfreude』メンバー。
その中の1人であり、『Schadenfreude』の楽曲プロデュースとラップを担当していた風浦巽が、別人のようにやつれた姿で再びカメラの前に現れた。それも──犯罪者として。
「お前の親、『Schadenfreude』だったんだ」
遥風の静かな声に、遼次はコクッと頷く。
「最低な奴でしたよ。毎日どっかほっつき歩いて滅多に家帰らなかったし、その事件があってからは母さんと離婚したし」
だから苗字が違うのか、と納得する。
「唯一感謝してることは、父親繋がりでアングラの良い仲間たちと知り合えたことすかね。不登校しながらその界隈に入り浸って、しばらく遊んでました」
遠い目をしながらそう話す遼次。まさか、こんな重要な独白がなされるとは思っていなかった。
このシーン、絶対使われるじゃん。こんな適当な格好で来るんじゃなかった……。
ひょこっとスタジオへ顔を出す。
床に腰を下ろしていた遼次と遥風が、ふっとこちらを向いた。
2人とも部屋着っぽい……もう22時近いし、当然か。
今まであまり遼次と絡んだことがなかったから、まず何を話せばいいか少し困る。
「……遼次って俺と同い年だよね?ピアス、校則引っかかんないの?」
とりあえず、話題に困ったら目についたものについて話す。遼次の、軟骨までバチバチに開いたピアスに触れる。
遼次は私の質問に、なんでもないように返した。
「別に……俺、学校全然行ってないし」
軽く耳元に触れ、そう言う遼次。
少し意外に思ったけれど、そこまで驚かない。今の時代、学校に通う以外の道を選ぶ人はたくさんいる。
学校よりも、音楽を極める道を取ったとか、おおかたそんなとこじゃないのかな。
そう思っていると、遼次の目がちょっと意外そうに見開かれる。
「詮索してこねーの?」
その瞳に、少し好意がちらついた気がした。
……あ、このままだと、好感度上がっちゃう。そう瞬時に察知して、私は慌てて身を乗り出す。
「いや、気になる。なんで?」
私の言葉に、遼次が少し気まずげに目を伏せた。うわ、今のもし放送されたら、デリカシー無さすぎって炎上するかな……。
遼次の好感度と視聴者の好感度を気にして行動するの、めっちゃ神経使って疲れる。
「……まあ、調べられたらいずれバレるだろうから、自分から話すけど」
ちょっと疲れたような声音で話し始める遼次。
「親が、犯罪やって逮捕されて。母さんはホストに通って自分の稼ぎほぼ使っちゃうから、俺が学校行かないで、音楽活動で稼いでいこうと思って」
隣で、遥風が少し息を呑む音が聞こえた。
「犯罪って?」
遥風の質問に、遼次が表情を変えずさらりと言う。
「多分知ってると思いますよ。風浦巽──麻薬使用容疑で逮捕」
意外な名前に、息が止まった。
それは、およそ5年前の出来事。絶対エース・仙李の自殺後、バラバラになった『Schadenfreude』メンバー。
その中の1人であり、『Schadenfreude』の楽曲プロデュースとラップを担当していた風浦巽が、別人のようにやつれた姿で再びカメラの前に現れた。それも──犯罪者として。
「お前の親、『Schadenfreude』だったんだ」
遥風の静かな声に、遼次はコクッと頷く。
「最低な奴でしたよ。毎日どっかほっつき歩いて滅多に家帰らなかったし、その事件があってからは母さんと離婚したし」
だから苗字が違うのか、と納得する。
「唯一感謝してることは、父親繋がりでアングラの良い仲間たちと知り合えたことすかね。不登校しながらその界隈に入り浸って、しばらく遊んでました」
遠い目をしながらそう話す遼次。まさか、こんな重要な独白がなされるとは思っていなかった。
このシーン、絶対使われるじゃん。こんな適当な格好で来るんじゃなかった……。
