──数分後。
私は、エマの本社棟の廊下を一人歩いていた。
ここに来たのは、LUCA合宿の説明を受けた日──遥風と仲直りした時以来だ。
そこまで時間は経っていないはずなのに、その間にあったイベントが濃すぎたせいで、すごく久しぶりに思える。
番組の撮影施設とは全く違う重厚な空気感は相変わらずで、やっぱり何度来ても慣れない。
ほのかに漂う新築のような匂い、完璧に整えられた静けさ──。
今日は、これまでとは違って夜に来たから、ガラス張りの壁越しに広がる都会の夜景が綺麗すぎて、なんとなく落ち着かない。
異様な空気に完全に萎縮しながらも、私は社長室の前の待合スペースに到着した。
社長室付近の壁は流石にガラス張りではないので、ようやく肩の力が抜ける。
建物全体透き通ってるのって、外から見たら綺麗だけど中からしたら結構嫌だな。一人きりのつもりでいてもどこから誰に見られているか分からない感じが、かなり居心地が悪い。私が社長だったら絶対改装させるのに……。
なんて、くだらない思考を巡らせていたその時──
ふわ、と。
不意に背後から伸びてきた手に、視界を奪われた。
「……っ?!」
一瞬、式町睦に誘拐された時の感覚が蘇って身体が硬直するけれど。
すぐに鼻腔をくすぐった、慣れた香りに力が抜ける。
