さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

なんで?
パニックになりかけるけど、すぐに思い当たる。さっき取り落とした時に、指が当たったのだろう。

『……千歳?』

遼次の、怪訝そうな声音。気まずそうに黙り込む遥風。

やっば。

スタジオにカメラがある手前、無視して切るのも悪印象。私は焦りながらも、なんとか誤魔化そうとする。

『あー……遥風が遼次にラップやらせるって言ったから、気になって繋げてもらってた。ごめん』

……我ながら苦しい言い訳。気になったなら同席すればいいのに、なんで盗み聞きなんかしてたんだって思われるだろう。

気まずい沈黙。

静寂を破ったのは、遥風だった。

『もうお前、バレたんだしこっち来いよ。顔合わせて話した方がお互いやりやすいだろ』

確かに、それはそうかも。
1人だけ電話越しに会話とか、奇妙だもんね。

『わかった、今行く』

そう言って、通話を切る。

せっかくシャワーを浴びたのに、また身支度し直すのも面倒なので、ろくに髪も整えず完全な部屋着で部屋を出た。放送されるかも分かんないし、適当な格好でいいよね。

それにしても、我ながら痛恨のミス……私が関わってることは知られたくなかったのに。
カメラは意識しつつ、遼次とはできるだけ距離が縮まらないように、気をつけなきゃ。

そんなふうに思いながら、私は足早に遥風たちのいるスタジオへ向かった。