さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

鏡の中に立つのは、中性的な美少年。
黒パーカーが白い肌に映え、シルバーのネックレスがスタイリッシュさをプラス。
オーバーサイズシルエットが体型を上手く隠し、シークレットシューズで脚も長く見える。

完璧な別人になっちゃったな。

「着替えました……」

「あらっ!やだ〜♡衝撃的な美少年!」

手を叩いて大絶賛する涼介さん。

それにしても、この人って一体何者……?

「潮田涼介。若手スタイリストの登竜門『International Styling Grand Prix』最年少優勝者。トップアイドル『黒羽仙李』の専属スタイリストとしても活躍した──業界のカリスマだよ」

私の思考を読んだように響いた、艶やかな声。

声の方を見ると、優羽がいた。
濃紺のロングコートを纏い、壁に寄りかかりながら微笑んでいる。

「時間がない。次に行くよ。来なさい」

「時間?」

戸惑う間もなく、優羽は踵を返す。

涼介さんは「困ったら連絡してね♡」と、メモを手に握らせた。
携帯番号らしい。

慌ててお礼を言い、優羽のあとを追う。

外はすでに夜。
一体どこに連れて行く気?
突拍子の無いことばっかり。このまま振り回され続けるのはごめんだ。

どうにかして抜け道を探して、この人の支配から逃れないと。

そんな密かな決意を胸に、私は黒塗りのベンツに乗り込んだのだった。