『二度と来るんじゃない』
──早く私を、嫌いになって。
栄輔くんの主旋律に重ねて、千歳くんの突き抜けるようなロングトーンが炸裂する。
触れたら壊れてしまいそうな、あまりに脆く儚い歌声でありながら──
どうしようもなく鋭く、強い、身を焼き尽くすような叫び。
──愛する人は、部屋を去った。
今までのことを謝り、哀しそうな微笑だけ残して、力無く歩み去っていった。
闇が落ちた静寂の中。
部屋の窓からひとり、月下に散る夜桜を見上げる。
もうあのひとは、二度と戻ってこない。
これで良かったのだ。
痛々しさを、微笑みで押し隠そうとしたけれど──
ぐしゃ、と。
笑みの輪郭が、痛々しく歪んだ。
『……ごめん……ごめんなさい……あたし、本当は…………』
袖で口元を押さえ、静かに泣き崩れて。
月の光と、舞い落ちる桜が滲み、じわりじわり溶け合ってゆく。
