さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜




『──我が名など 吹雪に紛れ 消ゆるとも
君が春 光の中で 咲かせましょう』



バックスクリーンに咲き乱れる花吹雪が、嵐のごとく舞い荒れて。

その華やぎを裂くように、千歳くんの超高音ボーカルが閃光のように弾け、ステージ全体が美と激情の奔流に呑み込まれていく。


愛していた。

だからこそ、その手は取れなかった。


『……光を失うのがね、いっとう恐ろしいんですよ』


脳裏にフラッシュバックする、作中の主人公のモノローグ。

自分のせいで彼が堕ちる可能性があるのなら、自分が悪役を買ってでも、あの人を光の世界へと突き放すしかない。


──少女のお気に入りに、繊細な桜の硝子細工のかんざしがあった。

大金をはたいて一流の職人に作らせたのであろうそれは、光に透かすと煌めいて、まるであの日見た川辺の景色のようで、見るたびに心がきゅっと締め付けられた。


だけど。

もう、その思い出ごと、断ち切らなければならないから。


再び部屋を訪れた彼の前で──

少女はそれを、思い切り床に叩きつけた。