ただ──
翔の歌声は、冷酷なまでの覚悟に染まりきっているようでいて。
時たま哀しげな色が滲み、そのたびに心臓の奥底が抉り取られるように痛む。
──本当は、手を取りたかった。
ずっと隣にいて、笑い合い、歳を重ねて。
春が来るたびに、同じ桜を見上げていたかったのだ。
けれど、今の自分は、愛するひとにとって『毒』にしかならない身分。
ならば。
『──春を穢さぬためなれば この背に咲け と唄放つ』
冷たい覚悟の裏で、ふっ……と一瞬だけ切なく、慈しむように目を細めた。
消えゆく歌声を壇上に残し、羽織を靡かせ、くるりと踵を返す。
爆発的なサビが終わり、トラックの音の層が霞んでゆく。
…………私、今、一体何を見てるんだろう。
この世のものとは思えない、『芸術』の真髄に触れている気がする。
個々の輝きでも十分に眩しすぎた彼らの才能が、かちりと音を立てて、運命的に合致して。
蓄積されてきた技術と、燻っていた才能がそれぞれ遺憾なく発揮され、巨大な化学反応を起こしているみたいだ。
と、そんな夢と現の狭間のような余韻に浸っている中で。
