貴方が死んだら、私も死ねばいい。
そうすれば、あの世で再会できるかもしれない。
あの世の桜の木の下で、ずっと寄り添って暮らしていけばいい。誰も邪魔者のいない平和な世界で、ただ一人の男と女として過ごすのだ。
紅潮した頬、どこか恍惚とした視線。今壇上にいるのは、吉原という名の夜の海を生き抜いてきた強かな遊女ではない。
ただ『初恋』という名の毒に身を浸し、破滅へと飛び込もうとしている、ひどく脆い『少女』の姿。
少女の可憐さと危うさが同居した高音が、自らを裂くように突き抜けて。
恋情が最高潮に達し、今にも崩れ落ちてしまいそうになった──
そのとき。
千歳くんに代わって中央へ躍り出たのは──
天鷲翔だった。
ビリビリと魂を震わす圧倒的な声量。
一音たりとも揺らがぬ、正確無比な音程。
千歳くんの熱量を瞬時に凍らせるような気高く冷たい歌声が、ステージを塗り潰す。
──根拠なき希望に縋るな。
こんなにも穢れに満ち、救いのない世で、想いの強さひとつで幸せな結末を掴めるとでも?
欲に任せて進めば、大切な人の生を、己が手で砕くことになる。
目を背けるんじゃない。
情愛という名の毒に侵され、視界が曇っていた千歳くんを、天鷲翔の冷徹なまでのストイックな理性が踏みとどまらせる。
